研究課題
植物の葉の表皮に存在する気孔は、一対の孔辺細胞からなる小孔であり、開閉運動を行うことでガス交換を調節する。孔辺細胞細胞質のカルシウムイオンは、気孔開閉運動の調節を行う孔辺細胞シグナル伝達において重要なセカンドメッセンジャーとして機能することが古くから知られている。本研究では、孔辺細胞シグナル伝達においてカルシウムイオンの輸送と感知に関与すると考えられる新規カルシウムイオンチャネル・細胞質カルシウムイオンセンサー候補因子の機能解析を進めている。シロイヌナズナT-DNA変異体コレクションからノックアウト変異体を得ることができなかったいくつかの遺伝子について、CRISPR/Cas9システムを用いて多重ノックアウト変異体の単離を行った。得られた多重変異体の気孔表現型解析を行い、候補遺伝子の機能重複を明らかにした。以上の植物の表現型解析により、気孔開閉運動の制御に関与することが明らかとなったGCMを含むカルシウムチャネル候補遺伝子について、アフリカツメガエル卵母細胞やHEK293細胞を異種発現系として用いた電気生理学実験を行い、イオン輸送活性の評価を試みたが顕著な活性は検出されず首尾に終わっている。そのため現在、タバコやシロイヌナズナの葉肉細胞プロトプラストなど発現系を植物に変更することを視野に入れて研究を進めている。細胞質カルシウムイオンセンサー候補因子であるキナーゼAについては、カルシウムイオンに依存した活性酸素種の蓄積に関与することを示唆する結果を得ている。
2: おおむね順調に進展している
ゲノム編集により、シロイヌナズナ多重ノックアウト変異体を単離することができた。強い表現型を示す変異植物体を得られたため、詳細なシグナル伝達の解析が容易になった。
植物細胞を発現系として用いた電気生理学実験によりカルシウムイオンチャネル候補因子のイオン輸送活性を評価する。キナーゼAにかんしてはリコンビナントタンパク質を用いた活性評価を行う。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 5件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件)
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