研究課題/領域番号 |
22K05570
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
實友 玲奈 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (20716378)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 細胞質雄性不稔性 / バレイショ / Solanum verrucosum / ミトコンドリア / 種間雑種 / Solanum stoloniferum / 稔性回復 |
研究実績の概要 |
四分子型細胞質雄性不稔性(T-CMS)の原因遺伝子と核ゲノムに座乗する稔性回復遺伝子を同定することを目的として、1) 花粉生育段階でのトランスクリプトーム解析および、2) 稔性回復に関わるQTL解析を行った。 花粉母細胞(PMC)から小胞子までの生育段階にある未熟な葯を用いて、ミトコンドリアゲノムのRNA-seq解析を行った結果、rpl5-nad6 遺伝子間領域を除いて、T-CMS系統と通常系統の間でミトコンドリア遺伝子の発現に有意な差は見られなかった。一方rpl5-nad6 遺伝子間領域には、T-CMS系統のみ多量の転写産物が見られた。リアルタイムPCRによる発現解析により、rpl5-nad6遺伝子間領域内の4つの領域のうち3つがT-CMS植物でのみ転写され、それらの転写レベルは小胞子段階よりもPMCおよび四分子段階で高かった。したがって、PMC段階でのrpl5-nad6遺伝子間領域の特異的な転写が四分子花粉の形成に関連している可能性が考えられた。 同一のS. verrucosum 系統を戻し交配したT-CMS型F1 (S. verrucosum × S. phureja) に由来する100のBC1植物、およびそれらの2つの兄弟交雑と1つの自殖系統について(各50個体)、正常花粉、染色花粉、および四分子花粉の割合を調べた。684 SNPの遺伝子座からなる連鎖地図を使用してQTL解析を実施した結果、正常花粉率は染色花粉率と強く相関し(r = 0.98)、それらのQTLは第5染色体(寄与率12.1%)および第11染色体(26.8%)上に検出された。四分子花粉形成はおそらく独立しており、そのQTLは第3染色体(76.5%)上に検出された。したがって、少なくとも3つのQTLsがT-CMS花粉の回復に関連していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
T-CMSの原因遺伝子の探索については、正確なミトコンドリア発現解析を実施し、候補領域の発現量の違いを特定できた。また、花粉生育段階別にRNAを抽出し、そこから発現量を定量できたことによって、花粉母細胞期で既に変化が起こっていることが明らかになったことが大きな成果である。 稔性回復遺伝子の探索については、寄与率の高いQTLを発見することができた。したがって今後それらの領域に照準を合わせることができる。 以上より、目的に向けての研究は着実に遂行されている。
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今後の研究の推進方策 |
rpl5-nad6 遺伝子間領域にT-CMS特異的な転写産物が確認されたので、これらがT-CMSに関わっていることを証明する必要がある。そのためには、ミトコンドリア遺伝子をターゲットにしたゲノム編集などの方法が考えられる。 また、花粉の発育ステージの差についても、サンプル数を増やして精度を上げる必要がある。 稔性回復因子の探索については、3か所のQTLが見つかったが、原因遺伝子の同定には至っていない。そのため今後、個体数を増やしてComparative Subsequence Sets Analysis(CoSSA)解析などを実施し、原因領域の絞り込みを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
RNAシーケンス解析に必要なサンプル数を増やす必要があったが、植物材料の生育がすでに適期を逃しており、実験を一時中断したため次年度使用額が生じた。
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