研究課題/領域番号 |
22K05582
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
房 相佑 宇都宮大学, 農学部, 教授 (50302443)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 根こぶ病抵抗性遺伝子 / アブラナ科作物 / 分子育種 / 種・属間交雑 |
研究実績の概要 |
ダイコンのもつ根こぶ病抵抗性を B. oleracea 「キャベツ類」に導入するため、ダイコンの根こぶ病抵抗性が導入済みのナタネとダイコン染色体添加型ナタネを抵抗性供試親として胚救済技術を用いたF1育成を行った。その結果、計10個体の雑種個体が得られた。また、ダイコンの根こぶ病抵抗性機構を解明するため、抵抗性品種‘聖護院ダイコン’と罹病性品種‘ビタミンダイコン’の根こぶ病感染時における菌の定量調査と根組織観察を経時的に行った。その結果、一次皮層剥脱前では品種間差は見られなかったが、一次皮層剥脱後において‘ビタミンダイコン’では木部・師部における急激な菌増殖や組織の異常化が観察されたが‘聖護院ダイコン’では抑制されていた。さらに、‘聖護院ダイコン’の根の師部において、β‐グルカンの染色色素である CFW の蛍光を放つ植物や菌の細胞壁とは異なる構造が多く観察された。この CFW 蛍光構造の抵抗性への関連性の調査を‘聖護院ダイコン’と‘ビタミンダイコン’の根こぶ病感染・非感染における師部での出現量比較で行った。その結果、CFW 蛍光構造は感染の有無にかかわらず試験期間を通して‘聖護院ダイコン’に多く存在し、感染初期における抵抗性に関係している可能性が示唆された。なお、この構造の垂直分布およびダイコン根こぶ病抵抗性遺伝子座 RsCR1 との相関性の調査を株本からの距離に基づく複数区画における縦断面切片観察、そして‘聖護院ダイコン’と‘ビタミンダイコン’の交雑後、‘ビタミンダイコン’で連続戻し交雑した NIL 系統の self 個体間での出現量比較で行った。 その結果、師部内において直線状に広く垂直分布し、細胞外に多く局在していた。CFW 蛍光構造の出現量と RsCR1 との間に明らかな相関は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り進めている。
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今後の研究の推進方策 |
「聖護院ダイコン」の共存戦略の理解>と同様の調査を、根こぶ病抵抗性ハクサイに ついても実施し、根こぶ病抵抗性ハクサイが聖護院ダイコンと類似した抵抗性機構を獲得し ているかを確認する。根こぶ病抵抗性ハクサイのゲノム構造を理解するために、Genomic in situ hybridization (GISH) 法によって、根こぶ病抵抗性ハクサイのゲノム中の何箇所にダイコン染色体断片が挿入されているのか、挿入断片の長さはどの程度なのかを明らかにする。根こぶ病抵抗性ハクサイの作出過程においてハクサイゲノムの一部が欠損した可能性があるため、ゲノムリシーケンスによって、ハクサイゲノムの残存状況を把握する。
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次年度使用額が生じた理由 |
114円の次年度使用額となった。
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