研究課題/領域番号 |
22K05593
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
新田 洋司 福島大学, 食農学類, 教授 (60228252)
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研究分担者 |
渡邊 芳倫 福島大学, 食農学類, 准教授 (30548855)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 水稲 / デンプン / タンパク質 / 品質 / 食味 |
研究実績の概要 |
「米の食味ランキング」(2022年、日本穀物検定協会)で「特A」であった14品種16銘柄米(以下「全国品目」)、秋田県産「サキホコレ」、福島県産「里山のつぶ」を対象とした。 「全国品目」白米ではタンパク質・アミロース含有率が同調的に変動した。 タンパク質・アミロース含有率の高・低各2品目の白米を走査電子顕微鏡で観察した。いずれもタンパク顆粒は表層部側で多かった。表層部ではアミロプラスト表面にタンパク顆粒の圧痕が認められ、高タンパク質含有率品目で高頻度であった。炊飯米の表面では、網目状構造が発達した明部と、糊化デンプンが緻密に蓄積した暗部とが認められた。 「サキホコレ」炊飯米では、表層部分の多孔質構造が食した際のやわらかさ、弾力の、表面明部の細繊維状構造・網目構造や暗部の薄い糊化デンプンの蓄積層がなめらかさ、やわらかさ、弱い粘りの要因と考えられた。「里山のつぶ」では、表面から表層部分で糊化が進んだ構造が認められた。一方、これら2品種の中間部や中心部で糊化が進んでいない構造は、適度な歯ごたえの要因と考えられた。 「無洗米」白米では、表面に糊化デンプンの塊やプレートが認められ、稜の上部で多いが、稜の斜面では製造方法により多・少があることが明らかとなった。 以上より、全国品目では、白米のタンパク質・アミロース含有率が品種・銘柄米の間で同調的にかわること、炊飯米表面の糊化デンプンの緻密な蓄積構造の形成はアミロース含有率やタンパク質含有率以外の要因が大きいこと、食味に関係する構成成分や白米・炊飯米の貯蔵物質の蓄積構造は多様であることが明らかとなった。また、炊飯米内部の糊化が進まない構造が「高品質・良食味」品目でも認められ、適度な歯ごたえの要因であると考えられた。さらに「無洗米」では、表面にタンパク顆粒ではなく糊化デンプンの蓄積が認められることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、日本国内で栽培され生産されている特色ある多様な品種や銘柄米について、米粒のデンプン組成、貯蔵物質の蓄積構造を作物機能形態学的に明らかにし品質および食味の要因を評価するともに、品種や銘柄米の特色を活用した持続的・安定的な栽培制御方法を考究することである。また、持続的・安定的な栽培制御方法として注目されている省耕起が水稲の生育におよぼす影響を明らかにすることも目的とした。 本年度は申請時に予定していた品種・銘柄から選抜した16品種18品目について米粒(白米)の組成および貯蔵物質の蓄積構造を解析し、タンパク質含有率・アミロース含有率の高いまたは低い品目の白米および炊飯米の微細構造を解析した。 その結果、第1に、白米におけるタンパク質含有率とアミロース含有率が同調的に変動すること(いずれも低い、いずれも高い)が明らかになった。このうち後者は品種依存性が強く栽培制御や環境等による変動は考えにくかったが、タンパク質含有率の高・低と同調することが明らかになったことから、市場で高品質・良食味米の指標の1つとされているアミロース含有率が栽培等によって制御できる可能性があることが示唆された。第2には、炊飯米の糊化程度とタンパク質含有率と連関が確認されるとともに、「高品質・良食味」品目においても中間部および中心部で糊化が進まない部分があることが明示された。一方、米粒の組成や貯蔵物質の蓄積構造、また炊飯米の糊化の様相や微細構造は、栽培環境や条件、年次間によって変動することが考えられ、次年度以降、引き続き検討する。 第3には、省耕起栽培の収量性は高収量の耕起栽培と低収量の不耕起栽培の中間的であり、耕耘の程度の収量性と連関が明らかになった。耕起以外の環境条件や年次間変動について、次年度以降、引き続き検討する。 以上より、本年度の研究は当初の予定どおり順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
水稲の品種・銘柄米の貯蔵物質の蓄積構造は、同一地域での栽培においても栽培環境や栽培制御によって年次間で変動する。したがって、2023年度および2024年度も、2022年度と同一内容・方法で研究を実施し年次間変動を明らかにする。また、品質・食味の高位安定化のための条件を検討する。 日本においては品種「コシヒカリ」が長年にわたって全国の作付面積の約1/3を占めてきたが、ここ10年ほどはその割合が徐々に低下してきた(33.9%(2020年))。低下の要因は消費者・実需者等の高品質・良食味米品種へのニーズ拡大による多様な品種の育成・栽培である。本研究では今後、品質・食味を左右する貯蔵物質の蓄積構造の差異について「コシヒカリ」との比較で明確にする。 さらに、本研究の結果をもとに、タンパク質・アミロース含有率が異なる品種・銘柄を割合をかえて配合(ブレンディング)する「新しい米」の制作を試みる。消費者・実需者の幅広いニーズ対応することができ、米を品種育成ではなく、市場で科学的根拠にもとづいてつくることができる。すでにその一端は、一部の米穀店や業者などが「ブレンド米」や「複数原料米」などとして販売されている。たとえば、玄米中のタンパク質が多い品種(A)とアミロースが少なく粘りが強い品種(B)とを割合を変えて配合し、日本米であってもチャーハンやピラフに特化した米(A:B=9:1)、寿司に適した米(A:B=6:4)、おにぎりに適した米(A:B=2:8)、などができる。本研究ではこのような「新しい米」を試作して炊飯し、糊化特性や品質・食味特性を明らかにして端緒をさぐる。 他方、省耕起栽培を含む異なる耕耘の程度の栽培が、米粒の貯蔵物質の蓄積構造ならびに品質・食味におよぼす影響を明確にする。 以上のうち、実験・調査は研究代表者・新田と分担者・渡邊が分担して実施し、研究代表者・新田が結果を総括する。
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備考 |
新田洋司 2022.イネってこんな植物! 形態&生理.農山漁村文化協会編,現代農業2022年5,7,8,9,11,12月号.農山漁村文化協会,東京. 新田洋司 2023.イネってこんな植物! 形態&生理.農山漁村文化協会編,現代農業2023年1,3,4月号.農山漁村文化協会,東京(戸田).
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