研究課題/領域番号 |
22K05605
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
船附 秀行 京都先端科学大学, バイオ環境学部, 教授 (60370590)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アズキ / 在来品種 / 粒大 / 遺伝特性 |
研究実績の概要 |
22年度に引き続き,学内圃場において,産地において特大粒を形成するといわれるアズキ在来品種「馬路大納言」と「薦池大納言」,対照品種として,通常の大粒品種「京都大納言」を比較栽培したところ,百粒重は「馬路大納言」と「薦池大納言」が約23g,「京都大納言」が約21gで有意差が認められた.昨年度ほどの品種間の差異はなかったが,「馬路大納言」と「薦池大納言」の百粒重は,昨年度に引き続き「京都大納言」より有意に大きく,極大粒を形成するのに少なくとも遺伝的要因が関与することが確認された.また,現地で収穫したサンプルと学内圃場のサンプルを比較したところ,「馬路大納言」,「薦池大納言」とも現地産のものが有意に大きくなり,今年度においては,産地による粒大の差異も明らかになった. ポット試験では,「薦池大納言」の産地の土壌と学内圃場の土壌を用いて,「薦池大納言」と「京都大納言」を栽培した.百粒重に有意な品種間差異が見られなかった一方,学内の土壌に対し,薦池の土壌では百粒重が有意に大きくなったことから,「薦池大納言」の極大粒形成には土壌も関与している可能性が示唆された. 「馬路大納言」と「京都大納言」の交雑後代のF2集団を圃場で栽培し,DNAを単離するとともに百粒重等の測定を行った.DNAはGRAS-Di解析に供し,得たDNAマーカーの遺伝子型を用いて,百粒重に関するQTL解析を行ったところ,有意なQTLが検出された.この近傍には,開花期に関するQTLも検出され,F2集団全体で百粒重と到花日数の間に正の相関がみられたが,この領域の影響を排除し,解析したところ,百粒重と到花日数の間に明確な関係性はなく,到花日数そのものが粒大に影響を与えているとは考えられなかった.したがって,開花期のQTLと百粒重のQTLは連鎖していることが推定された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学内圃場の試験では,産地以外の圃場でも「馬路大納言」と「薦池大納言」が極大粒品種としての特性を発揮することが複数年で確認され,「馬路大納言」と「薦池大納言」が極大粒を形成する特性に少なくとも遺伝的要因が関与することが確認された.また,「馬路大納言」と「京都大納言」の交雑後代の解析では,F2世代ながら百粒重に関し有意なQTLが検出され,「馬路大納言」が粒大に関し,効果の大きな遺伝子を持っていることが示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
ポット試験については,薦池の土壌の効果を確認するため,再度試験を行う.また,「馬路大納言」と「京都大納言」の交雑後代で検出されたQTLの確認を行う.具体的には,世代を進めた集団を圃場で栽培し,各系統からDNAを単離しGRAS-Di解析を行うとともに,各系統の百粒重の測定を行い,百粒重および開花期に関するQTL解析を行う.その結果から両者の関係を明確化する.また,同じ領域に「馬路大納言」と「薦池大納言」の間でも百粒重に関するQTLが検出されるか否かを検証するため,第4染色体上に「馬路大納言」と「薦池大納言」の間で多型を示すDNAマーカーを開発した上で,「馬路大納言」と「薦池大納言」のF2集団において,百粒重の測定とDNAマーカー解析を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に「京都大納言」と「馬路大納言」の交雑後代のマーカー解析の委託を予定していた機関への委託ができなくなったので,2024年度に,最も進んだ世代において,各系統のジェノタイピングのためGRAS-Di解析を行うことに変更した.今年度までの未使用額は,それに充当する.
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