研究課題/領域番号 |
22K05612
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松本 省吾 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (90241489)
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研究分担者 |
太田垣 駿吾 名城大学, 農学部, 准教授 (50597789)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 園芸学 / 果樹 / リンゴ / 自家不和合性 / SFB遺伝子 / S遺伝子型 |
研究実績の概要 |
自家不和合性に関わる17番染色体上の機能性SFB遺伝子ならびに9番染色体上に存在する新奇機能性SFB遺伝子の同定に際しては、リンゴ品種毎の染色体レベルのゲノム解析が必要である。本年度は、ナノポアシーケンスによるゲノム解読に向け、NucleoBond HMW DNA(タカラバイオ)を用いてS1S20アリルを有する‘祝’、S20S24アリルを有する’Rome Beauty’、S1S24アリルを有する‘夏錦’、ならびにS3S7アリルを有する‘JPP35’の葉から高分子量DNAを抽出した。しかしながらOxford Nanopore社での研究分担者所属先変更情報の更新に数ヶ月の時間を要するという想定外の事態に直面し、当該年度内でナノポアシーケンサーMinIONによるシーケンスデータの取得が完了した品種は‘JPP35’のみに留まった。なお‘JPP35’のナノポアシーケンスではリンゴのゲノムサイズの約60倍に相当する約28.9GBの配列を取得できており、残る3品種でも同等のデータ量を確保すれば予定していた解析は実施可能と判断された。 また、DDBJなどのデータベースからS-RNaseアミノ酸配列データを取得し、系統解析の結果を基にS-allele表記について統一番号を割り付けた。野生種のS遺伝子標記の始めにwを付けて栽培種と識別するとともに、データベース並びに文献情報を基に追加・修正した1000品種以上(新たにS遺伝子型が同定された中国のリンゴ150品種を含む)のS遺伝子型情報を電子ファイル化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、リンゴ葉からの高分子量DNA抽出法を確立し、本法を用いて’祝’、’Rome Beauty’、’夏錦’、 ’JPP35’からの高分子量DNA抽出に成功した。続いて、ナノポアシーケンサーMinIONを用いて’JPP35’のシーケンスデータの取得を行い、今後の染色体レベルでのゲノム解析に資する十分量の配列データを取得することに成功した。研究実績の概要に記したように、想定外の事態によりその他の品種のデータ取得には至らなかったものの、’JPP35’と同じクオリティのDNAが取得できていることから、今後残りの品種についても問題なく十分量のデータ確保ができると考えている。また、S遺伝子型情報の取得についてはほぼ予定通りに進行しており、更なる情報を追加してS遺伝子型情報の電子ファイル化を終了する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は、想定外の事態もありデータ取得に時間を要したが、方法の確立ができたことから、今後はスムースにデータ取得が進むものと思われる。データ取得後のデータ解析がポイントとなるので、研究分担者と協力して、ゲノム上のS遺伝子群の構成の詳細を明らかにする予定である。この際、特に、17番染色体上に存在する機能性のS1-、S20-、S24-SFB の絞り込みを行う予定である。また、’ピンクパール’後代の’JPP35’の9番染色体に機能性S3-SFBが存在することの確認も行う予定である。さらに、S遺伝子型情報のデータベースを基に、ホームページ上に和合・半和合・不和合の交配品種組み合わせ検索システムを公開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定したシーケンスデータの取得が想定外の事態により1品種のみに留まったため、翌年度に残りの品種からのデータ取得を行うことにしたため。
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