研究課題/領域番号 |
22K05620
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
神崎 真哉 近畿大学, 農学部, 教授 (20330243)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 花芽形成 / FT遺伝子 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、マンゴーの夏季開花の仕組みを解明することにより、常緑果樹における低温を必要としない花成制御機構を明らかにし、開花期の調整や生産の安定化のために有用な知見を得ることである。マンゴーは世界中の熱帯・亜熱帯地域で栽培されているが、熱帯域よりも寒暖の差が明確な亜熱帯域の方が、開花が揃うため栽培に適している。しかしながら、近年、地球温暖化の影響により、亜熱帯域においても花成誘導に必要な低温遭遇時間を満たさずに開花量が減少することが報告されている。国産マンゴーの主要品種である‘Irwin’は花成に低温遭遇が必要とされるが、まれに高温下でMiFTが増加しなくても花成が誘導されることがある。本研究では、マンゴーにおけるMiFTを介さない高温下での花成誘導の仕組みを明らかにすることを目的とする。 本年度は、‘Irwin’において夏季開花を誘導することができなかったため、低温遭遇期から花芽分化期にかけての頂芽における花芽形成関連遺伝子の発現変動を解析した。近畿大学農学部内圃場のガラス温室でポット栽培されている‘Irwin’と‘Nam Doc Mai’を用い、低温(18℃以下)遭遇時間が0時間、500時間、900時間および加温開始後の葉および頂芽をサンプリングし、花芽形成関連遺伝子の発現量を調査した。また、近畿大学附属農場で栽培されている‘Irwin’を用いて、低温遭遇期間中に葉にジベレリン(GA)を処理し、GA処理が花芽形成関連遺伝子の発現に及ぼす影響を調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究から、前年度の秋冬期に低温遭遇しなかった個体は春に開花せず夏季開花することが確認されている。しかしながら、これまで‘Irwin’では安定して夏季開花を誘導することができていない。昨年度、秋冬期に高温下で栽培することで花成を抑制した‘Irwin’を用いて実験を行ったが、夏季開花が確認できたのは1樹のみであったため、夏季開花に関連する遺伝子の発現解析はできなかった。今後は、夏季開花しやすい‘Nam Doc Mai’を用いて実験を進める必要があると考えられる。一方で、秋冬期に頂芽で発現する花芽形成関連遺伝子の発現変動を確認することができたことから、今後、春夏期における発現を調査して比較解析することで何らかの知見が得られると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き夏季開花を誘導する条件を検討するが、供試材料に限りがあるため‘Irwin’でその条件が見いだせない可能性もある。その場合は‘Nam Doc Mai’等の夏季開花の容易な品種を用いて実験を行う。一方、栄養成長時の頂芽における遺伝子の発現様式を解析することにより、芽の成長を制御する因子の解析を進める予定である。花芽形成に関与する遺伝子が萌芽時期の制御にも関与している可能性が考えられており、栄養成長時と生殖成長時の差異を解析することで検証する。近年、マンゴーの花成に関する研究成果が海外から次々と発表されているが、その中には我々の知見と一致しない点も多くあるため、気温制御や植調剤による影響を中心に多面的に解析していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、RNA-seq解析を予定していたが、夏季開花時のサンプルが得られなかったため、解析を見送った。次年度以降に解析を予定している。
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