研究課題/領域番号 |
22K05621
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研究機関 | 公益財団法人岩手生物工学研究センター |
研究代表者 |
根本 圭一郎 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 園芸資源研究部, 主任研究員 (60566727)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ブドウ / アブシジン酸 / コムギ無細胞系 |
研究実績の概要 |
これまでに、ABAシグナルの負の調節因子PP2Cタンパク質が細胞内で未知フプロテアーゼによって切断・分解誘導を受けることを見出している。本年度の解析によって、ブドウには9種類のPP2Cタンパク質が存在するが、その内の5種PP2Cのみが切断・分解誘導を受けること、さらに、その切断・分解誘導にはPP2Cタンパク質のN末端領域が重要な役割を果たしていることなどを明らかにした。また、PP2Cタンパク質の分解は、サイトカイニンやオーキシンなどの植物ホルモン存在下において抑制されることを見出した。そこで、PP2Cの切断・分解酵素を同定するために、RNA-seq解析によって上記植物ホルモン処理によって発現変動する遺伝子を選抜し、候補因子とPP2Cとの相互作用解析および分解試験を実施し、現在までに、PP2Cの分解を促進するいくつかの新規プロテアーゼおよび新規ユビキチンリガーゼを見い出すことに成功している。見出した因子は、サイトカイニン・オーキシンとABA間の拮抗的な関係性にあるシグナル調節因子としての機能があることが予想される。 上述にあるように、ABAシグナルはサイトカイニンやオーキシンなどと拮抗的な関係性にあるが、ジベレリンもその1つであることが知られている。しかしながら、その分子機構はあまり知られていない。そこで、ジベレリンとABAシグナルとの関係性についても調査を開始したところ、興味深いことに、ABA受容体がジベレリンのシグナルコア因子と直接的に相互作用し、その安定性が変化することを見出した。これらの結果から、ABAシグナルのコア因子であるABA受容体、PP2Cは複数の植物ホルモンによってその安定性が制御されており、それによってABAシグナルの強度が調節されている可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、ブドウPP2Cと相互作用し、切断・分解を誘導するいくつかの候補因子を見出すことに成功している。さらに、これらの因子はサイトカイニンまたはオーキシンによって優位に発現レベルが低下することが明らかになっており、サイトカイニン・オーキシンとABAシグナルの拮抗的なシグナル調節因子としての機能があることが予想される。最終年度において、見出した因子の機能を明らかにすることで、分子レベルではほとんど未解明なサイトカイニン・オーキシン-ABAシグナルクロストークの一部を解き明かすことが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
VIGS法などを用いた遺伝子発現抑制培養細胞および果実を作出し、見出したPP2C切断・分解候補因子の機能を遺伝子、タンパク質、代謝産物レベルで解析し明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
R5年度のRNA-seq解析は、所属センター内での共同研ベースで実施できたために費用がかからなかった。しかし、R6年度は、遺伝子発現抑制細胞株、果実を対象にしたRNA-seq解析、メタボローム解析、プロテオーム解析を実施する予定であるために業者委託解析費用として使用する予定である。
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