研究課題/領域番号 |
22K05629
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉岡 泰 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (60202397)
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研究分担者 |
松本 省吾 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (90241489) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / 低温プラズマ / コチョウラン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ランの分子育種にかかる時間を短縮するために、外来遺伝子のゲノムへの組込みを伴わないコチョウラン原種(Phalaenopsis aphrodite)のゲノム編集技術を開発することである。本年度は、Cas9-GFPのタンパク質を精製するためのタンパク質発現用プラスミドを作成し、大腸菌を用いてCas9-GFPタンパク質の精製を行った。大腸菌でのCas9-GFPタンパク質発現誘導条件、細胞破砕方法、精製したCas9-GFPタンパク質の保存条件などを検討し、標的配列に2本鎖切断を導入する活性を持つCas9-GFPタンパク質を大量に精製できる方法を確立した。さらに、精製したCas9-GFPタンパク質とヘリウムガス低温プラズマを用いて、ランプロトコームおよび、シロイヌナズナ幼植物体へのCas9-GFPタンパク質導入実験を行い、ラン、シロイヌナズナいずれにおいてもCas9-GFPがプロトコーム細胞内に導入され、核局在することを確かめた。低温プラズマの照射方法として、植物体に直接低温プラズマを照射する方法とタンパク質溶液に浸した状態で溶液に対して低温プラズマを照射する方法とを比較した。その結果、Cas9-GFPの場合は植物体に直接低温プラズマを照射し、その直後にCas9-GPFタンパク質を添加する方法が適していた。また、低温プラズマを植物体に直接照射しても植物体の生育には影響はなかった。今年度得られた成果を発展させることによって、ゲノム編集に必要なタンパク質とRNAを植物細胞の直接導入し、外来遺伝子の組込みを伴わないゲノム編集が植物において可能となることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標的配列DNAを2本鎖切断する活性を持ち、植物細胞内で核局在するCas9-GFPタンパク質の大腸菌での合成、精製条件を確立した。また、生成したCas9-GFPタンパク質は低温プラズマ照射によってランプロトコーム、および、シロイヌナズナ幼植物の細胞内に導入することができた。したがって、今年度までに低温プラズマ照射を用いてゲノム編集に必要なタンパク質とRNAをランの細胞に直接導入し、ゲノム編集頻度を測定する準備が整ったと考えられる。昨年度クローニングしたコチョウランの花成抑制遺伝子候補の解析については今年度特に進捗はなく、今後シロイヌナズナの変異体を利用して検証する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
低温プラズマ照射を利用したタンパク質・核酸直接導入によるゲノム編集方法の確立に研究の重点を置き、コチョウランにおいて低温プラズマによるCas9-GFP、sgRNA直接導入によって、ゲノム編集が可能であることを示す。さらに、コチョウラン以外の植物においても確立した手法によってゲノム編集が可能であるかを検討する。sgRNAは試験管内転写反応を用いて合成したものを用い、Cas9-GFPタンパク質は大腸菌で合成したものを精製して用いる。変異がホモ接合となった細胞の検出が容易であるPDS3遺伝子をゲノム編集の標的として用いる。また、研究を加速するためシロイヌナズナを用いて種々の実験条件検討を行い、確立した条件を用いてコチョウランのゲノム編集を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬等の使用量が見込みより若干少なかったため次年度使用額が7,549円発生した。次年度使用額は令和6年度においてRNA合成試薬購入費用の一部に充てる予定である。
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