研究課題/領域番号 |
22K05630
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長坂 京香 京都大学, 農学研究科, 助教 (00931388)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ハイブッシュブルーベリー / 自家不稔性 / 種子形成 / 受粉 / サザンハイブッシュブルーベリー |
研究実績の概要 |
ブルーベリー(Vaccinium spp.)は自家不稔性を有し,自家受粉を行うと果実中の成熟種子数が減少することが知られている.果実中の成熟種子数は果実サイズや熟期と相関関係にあることが報告されているため,種子数はブルーベリー栽培の成否に影響する重大な因子であるが,種子に発育不全をもたらすメカニズムは明らかにされていない.広く栽培化されている四倍体ブルーベリーを供試し,種子発達を制御するメカニズムおよび種子発達が果実肥大に及ぼす影響の解明を目指し,以下の研究を行った. ‘ブルーマフィン’の自殖後代を供試し,dpMIG-seq法によりジェノタイピングを行った.自殖後代において実際に観察されたジェノタイプの分離比とメンデル遺伝を想定した場合に期待される分離比との間でχ2検定を行った.その結果,8番染色体上にnulliplexの頻度が有意に減少しているゲノム領域を検出した.既報の集団を供試して同様の解析や塩基多様度を調査したところ,上述の領域においてヘテロ接合度が高く維持されていることを支持する結果が得られた.これらの結果から上述の領域は種子の発育不全に関連している可能性が示された. ‘ブルーマフィン’の果実を経時的にサンプリングし,Lasy-seq法によりトランスクリプトーム解析を行った.自家受粉果実と他家受粉果実を比較したところ,受粉1日後のサンプルからも多くの発現変動遺伝子が検出された.‘ブルーマフィン’の種子細胞を観察した先行研究において受粉20日後までに発育不全種子が観察されることが明らかになっているが,種子発達の極めて初期段階において遺伝子の発現に変化が生じている可能性が考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
‘ブルーマフィン’の自殖後代を供試しχ2検定を行った結果,3番,8番および9番染色体上にnulliplexの頻度が有意に減少しているゲノム領域が検出された.そのうち8番染色体については,二倍体ブルーベリーのF1集団においてnulliplexの減少を示すSNPsが集中する領域や,多様な品種の集団において塩基多様度が高いと推定される領域と一致していたため,信頼性の高い候補領域が得られたと考えられる.加えて,‘ブルーマフィン’の自家受粉果実と他家受粉果実の比較により発現変動遺伝子を検出しており,種子の発育不全に関連する候補遺伝子の同定に向けたデータの取得についても滞りなく進んでいる.よって,本研究はおおむね順調に進んでいると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
年次変動について考慮するために,再度‘ブルーマフィン’の果実を経時的にサンプリングし,トランスクリプトーム解析を行う.8番染色体の候補領域内の遺伝子のうち,種子で発現しており,自家受粉果実と他家受粉果実の間で発現量が有意に異なるものを探索する.さらに,自殖後代に対して自家受粉を行い,果実内の種子数と候補領域内のSNPsのジェノタイプとの関連を調査する.以上の結果を統合して種子の発育不全に関連する候補遺伝子の絞りこみを行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
RNA-seqに用いる組織別のサンプルについてはRNAの抽出に時間を要し,当該年度に実施できなかったため次年度使用額が生じた.翌年度は,組織別のサンプルからRNA-seqを行うとともに,候補遺伝子を絞り込むことを目的としてシーケンスを行う予定でいる.
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