研究課題/領域番号 |
22K05631
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
原田 太郎 岡山大学, 教育学域, 准教授 (80468256)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | カーネーション / 花弁形成 / AP2遺伝子 / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
本研究は,主要花き品目の1つであるカーネーションを用いて,花弁形成に中心的な役割を果たす転写因子であるAPETALA2(AP2)に着目し,(1) ゲノムデータベースを用いたAP2遺伝子ファミリーの構造解析,(2) in situ ハイブリダイゼーションによる組織発現解析,(3) ゲノム編集による機能解析を行うことで,カーネーションにおける花弁形成の分子基盤を花器官アイデンティティの決定機構の観点から解明することを目的としている.得られた成果は,新たな花型をもつカーネーションの作出や,花の形態形成過程および収穫後生理過程に関与する遺伝子の機能解析のプラットフォームとしての応用が期待される. 令和4年度は、すでにカーネーションゲノムデータベースで同定していた9個の推定AP2遺伝子の詳細な構造および分子系統解析を行うとともに,それらの花器官における発現レベルをRT-PCR法により調査し、遺伝子ごとに発現パターンが異なっていることを明らかにした.また、euAP2グループに属する3遺伝子については、全長または部分cDNA配列を単離するとともに、リアルタイムRT-PCR法によりその発現レベルを定量的に調査し、いずれも花弁で優勢に発現するものであること明らかにした.さらに、八重花形成への関与が示唆され、PETALOSA(PET)と名付けられたグループに属する遺伝子Dca21030.1(新たにDcAP2-2と命名)の花芽発達過程における発現部位をin situハイブリダイゼーション法を用いて調査した結果、いずれのステージでもすべての環域でその発現が認められ、この遺伝子が花器官のアイデンティティ決定には関与せず、時空間的に幅広い活性を保つことで八重花形成に関与している可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、(1)カーネーションAP2遺伝子ファミリーの発現プロファイルの獲得、および(2)CRISPR-Cas9によるカーネーションのゲノム編集実験系の構築を進める計画としていた.(1)については、おおむね計画通り進めることができ、その結果、花弁形成への関与が予想される遺伝子を3つに絞ることができた.そのうち、当初から詳細な調査を計画していた1つ(DcAP2-2)については、全長cDNAの配列を単離、決定し、花芽発達過程での発現も確認することができた.残りの2つ(DcAP2-1およびDcAP2-3)については、部分配列しか得られておらず、花芽発達過程での発現も未確認であるため、今後継続して解析を進めていく予定である.(2)については、DcAP2-2をターゲット遺伝子としたゲノム編集実験系の構築を計画、準備している段階である.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度以降は、(2)CRISPR-Cas9によるカーネーションのゲノム編集実験系の構築、および(3)花弁形成におけるカーネーションAP2遺伝子の機能の実証を計画している.(2)については、既報に基づいてアグロバクテリウム法を用いたカーネーションの再分化系を構築するとともに、CRISPR-Cas9用のコンストラクトを作製し、DcAP2-2をターゲット遺伝子としたゲノム編集を試みる.同時に、DcAP2-1およびDcAP2-3についても全長cDNAの単離と花芽発達過程での発現の確認を進め、ゲノム編集のターゲット遺伝子に加えることを想定している.これらの実験の進捗状況を踏まえながら、(3)の遂行を目指した研究の戦略を具体的に定めていく予定である.
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