研究課題/領域番号 |
22K05636
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
神戸 敏成 龍谷大学, 農学部, 教授 (00393108)
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研究分担者 |
小松 健 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60451837)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ウイルスフリー化 / 脱分化 / 再分化 / ユリモットルウイルス / オオバコモザイクウイルス |
研究実績の概要 |
ユリモットルウイルス感染カノコユリから誘導したカルスを2回継代培養した際に再分化した小植物体の20%においてウイルスが検出されなかった。この結果は、脱分化ー再分化系を利用してユリのウイルスフリー化が可能があることを示唆している。しかしながら、アスコルビン酸については、ウイルスフリー化に関する有効性は今のところ確認できていない。また、オリエンタル系の主力品種である‘カサブランカ’2系統を用いて、脱分化ー再分化系の確立を目指したところ、他のユリの脱分化に有効であった1-2 mg/Lのピクロラムでは、安定した脱分化を誘導することができず、高濃度のピクロラムが‘カサブランカ’の脱分化には有効であることが明らかになった。 オオバコモザイクウイルス(PlAMV)は系統解析の結果1つの鑑賞ユリクレードと、4つの野生クレードからなることがわかった。このうち野生分離株のみからなるクレードIIIのオオバコ分離株であるPL1-1をオオバコに感染させると100%の感染が見られ、ウイルスは根からも検出された。地上部が枯死したあとに新たに出てきた葉でも感染が確認されたことから、PlAMVは多年生植物の更新のあとも感染が持続していることがわかった。さらにウイルス配列の多様性を調べたところ、植物個体内での多様性は地上部の再生に伴い顕著に上昇した。 PlAMVの単一配列株「KK」をユリの球根に感染させる系を用いて、春と夏に植え付けたユリ球根への接種試験を行ったところ、春接種区では壊そ病徴がほぼ100%の接種植物で現れRT-qPCRにより感染が確認された。しかし、夏に向け温度上昇につれて病徴は弱くなり、上葉ほど病徴は減衰した。夏接種区では壊そ病徴、感染確率ともに春接種区より低く、生育時の高温でPlAMVは感染効率が低下することが判明した。この結果は、今後のウイルスフリー化の実験において重要な知見となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カノコユリに加えオリエンタル系ユリの主要品種である‘カサブンランカ’においても脱分化ー再分化系を確立しつつある。また、すでに確立しているカノコユリにおいて、アスコルビン酸がウイルスフリー化に及ぼす影響についての検証も開始している。すでに、脱分化ー再分化系を利用して得られた一部の小植物体はウイルスフリー化していることも確認している。 オオバコモザイクウイルス(PlAMV)の系統解析が進み、野生分離株のみからなるクレードIIIのオオバコ分離株であるPL1-1の感染実験では、100%の感染が確認された。これまでの研究によりPlAMVは多年生の植物の更新後も感染が持続していることが明らかになった。また、RT-PCRとクローニングによりシーケンスを行った結果、地上部の再生に伴い個体内でのPlAMVの多様性が顕著に上昇することが明らかになった。さらに単一配列の株「KK」をユリの球根に感染させる系を用いた実験において、春接種区と夏接種区による感染確率や病徴に差があることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
ユリモットルウイルス感染株から誘導したカノコユリおよび‘カサブランカ’のカルスを用いた再分化系を利用して、脱分化ー再分化系によるウイルスフリー化の検証をさらに進める。今のところ効果が見られていないアスコルビン酸についても、追試を進めて脱分化ー再分化系の有効性を検証する。新たに、ウイルス感染しているテッポウユリの雄蕊から直接カルス誘導を試み、脱分化ー再分化系によるウイルスフリー化を検証する。 単一配列のPlAMVのウイルスフリー化されたユリ鱗茎への接種試験を引き続き行い、ウイルス感染を確認する。鱗茎からのウイルス検出をデジタルPCRで行い、微量のウイルスがどの程度鱗茎で見られるかを確認する。低温での休眠と次年度の発芽に伴うウイルス蓄積量と多様性の変化を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた試験の一部が延期になったことで、若干ではあるが次年度使用額が生じた。延期した試験の実施を含めて、翌年度は計画通り使用していく予定である。
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