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2023 年度 実施状況報告書

R遺伝子RPS6の3'UTRに生じる特異なRNAの分解が果たす調節機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K05654
研究機関香川大学

研究代表者

市村 和也  香川大学, 農学部, 教授 (70321726)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード病害抵抗性遺伝子 / 転写後調節 / DEAD-box RNAヘリカーゼ / 核RNAエキソソーム
研究実績の概要

シロイヌナズナMAPキナーゼ経路、MEKK1-MKK1/MKK2-MPK4経路の欠損は、NLRタンパク質のRPS6とSUMM2の活性化により、矮性を伴う防御反応表現型を示す。申請者は、この表現型のサプレッサーとしてRNAの品質管理で重要な核エキソソームの構成因子HEN2を同定した。核エキソソームは、遺伝子の転写後調節段階において異常なRNAの除去、プロセシング、ターンオーバーなどで重要である。RNAヘリカーゼをコードする核エキソソームの構成因子hen2 の変異体では、抵抗性遺伝子RPS6の3′UTRに異常な転写物が蓄積し、RPS6を介した病害抵抗性が低下する。異常な転写物の蓄積とRPS6の機能低下は相関するが、直接の原因であるかは不明である。この点を解明するため、野生型での上記転写物の過剰発現がRPS6の病害抵抗性を低下させるか、また、hen2 変異体おける異常な転写物をコードするDNA領域の欠失が病害抵抗性を回復させるか検証することを目的としている。
最近、他のグループの研究により、転写物が増加した領域にTIRドメインをコードする新奇遺伝子の存在が示された。これを受けて、RPS6遺伝子の3′末端領域に由来する転写物自体か、もしくはそこにコードされるTIRタンパク質のどちらが、hen2変異体における病害抵抗性低下の原因か検証を行った。その結果、RPS6遺伝子の3′末端領域に由来する転写物がhen2変異体における病害抵抗性低下の原因である可能性が強まった。更に上記の転写物を過剰発現するシロイヌナズナ形質転換体を作製し、hopA1認識を介した病害抵抗性および防御関連遺伝子発現を解析したところ、両者において低下が確認された、以上より、hen2 変異体で生じるRPS6 3′領域の異常な転写物の過剰発現がRPS6 の機能低下に十分であると示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

RPS6遺伝子の3′末端領域に存在する新奇TIR遺伝子は、hen2変異によりTIRドメインをコードするORF全長を含む領域の転写量が上昇した。hen2変異体における病害抵抗性低下の原因が転写物自体か、もしくはそこにコードされるTIRタンパク質のどちらが判別するため、Yeast two-hybrid法により新奇TIRタンパク質とRPS6のTIRドメインの結合を解析した。その結果、タンパク質間の相互作用は検出されなかった。このことから、新奇TIR蛋白質がRPS6に干渉して機能低下を引き起こす可能性は低いと考察された。
次に、転写物がRPS6 の3′UTR から生じる転写物が影響を与える可能性を検証するため、転写物のみを過剰発現する野生型シロイヌナズナを作製し、RPS6 を介した病害抵抗性を解析した結果、野生型に比べ罹病性を示した。よって、hen2 変異によるRPS6の機能低下は異常なRNA に起因すると考えられた。転写物の過剰蓄積によるRPS6機能低下をさらに実験的に検証するため、エストラジオール誘導性hopA1 形質転換体との二重形質転換体が作製された。hopA1 誘導依存的にRPS6 を介した防御関連遺伝子の発現を解析した結果、二重形質転換体では野生型バックグラウンドと比較してhopA1 誘導依存的に防御関連遺伝子の発現量が低下した。以上の結果から、hen2 変異体でのRPS6 3′領域の異常な転写物の過剰発現はRPS6 の機能低下に十分であると示めされた。

今後の研究の推進方策

今後については、hen2 変異体を用いてRPS6遺伝子の3′UTRにおける異常な転写物をコードするDNA領域を欠失させ、hen2変異体が示す病害抵抗性低下が回復するかの検証を進める。2系統のゲノム編集系統が作製されたため、hen2およびsmn2変異を導入し、二重変異体を作製する。これら系統にPesudomonas syringae pv. tomato DC3000 (hopA1)を接種して病害抵抗性を変異体、及び野生型と比較する。さらに、ゲノム編集系統を、エストラジオール誘導性hopAを含むベクターで形質転換することで、hopA1誘導時の防御関連遺伝子発現を解析する。以上により、先に実施しているRPS6遺伝子の3′UTRから生じる異常な転写物の過剰発現体の解析に加え、ゲノム編集系統を用いることでcomplementな実験系となり、本実験を実施することでsolidな実験的検証が可能になると考えられる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Plant U-box E3 ligases PUB20 and PUB21 negatively regulate pattern-triggered immunity in Arabidopsis2024

    • 著者名/発表者名
      Yi So Young、Nekrasov Vladimir、Ichimura Kazuya、Kang Si-Yong、Shirasu Ken
    • 雑誌名

      Plant Molecular Biology

      巻: 114 ページ: 7

    • DOI

      10.1007/s11103-023-01409-6

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Genetic Analysis of Autoimmunity Arising from Disruption of the Defense-Related MAP Kinase Pathway in Arabidopsis thaliana2023

    • 著者名/発表者名
      Kazuya Ichimura
    • 学会等名
      Second Trilateral Symposium on SDGs
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] シロイヌナズナhen2 変異体におけるRPS6 の機能欠損にRPS6 の3′領域から生じる転写物が関与する2023

    • 著者名/発表者名
      川人恵理香, 永井鈴奈, 高木桃子, 白須賢, 望月進, 秋光和也, 市村和也
    • 学会等名
      令和5年度日本植物病理学会関西部会

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公開日: 2024-12-25  

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