研究実績の概要 |
動物の成体には種特異的なサイズが存在する。自身のサイズを認識して成長を制御する機構の存在が予想されているが、サイズの増加の停止を把握するのは難しくその詳細はほとんどわかっていない。完全変態昆虫では幼虫の間にサイズが大きくなり、蛹になるとそれ以上大きくならないことから、成長する期間を明確に判別できるため、例外的に、種特異的なサイズを規定する機構の存在が実験によって確認されている。幼虫はCritical Weight (CW) とよばれる体重に到達すると蛹変態できるようになる。本研究では、最終的な体サイズを規定するCWを中心とした機構の解明を目的とした。 まずはCWを2.0mgと特定し、蛹変態を制御する内分泌系に関わる遺伝子群の発現量がCW前後に変化することをqPCRで確認した。次に、CWの情報を、内分泌系に伝える分子を探索するため、CWを境に発現量が変動している遺伝子をRNA-seq.によって得た。そのうち、変動が大きかった34遺伝子の発現量の詳細をqPCRで解析し、CWを境に発現量が変動する遺伝子を絞り込んだ。これらの遺伝子の中には、ホルモンで制御されて変態に関与するものが含まれると考えられる。そこで幼若ホルモン(JH)を投与した幼虫における遺伝子発現量をqPCRで解析した。CW到達後に発現量が上昇した遺伝子TC011180, TC031629, TC032196の発現量がJH投与によって低下した。蛹変態を誘導することが知られているE93も同様にJHで抑制されたことから、JHで抑制された3遺伝子も蛹変態の制御に関与している可能性がある。 絞り込んだ遺伝子のうち4遺伝子を選び、RNAiによってノックダウンし、蛹変態の時期や割合に影響があるか解析した。まず、E93で解析したところ、蛹変態が阻害された。一方で、4つの候補遺伝子のうち、蛹変態に影響を与えたものは得られなかった。
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