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2023 年度 実施状況報告書

昆虫脂肪体幹細胞の連続培養及びオルガノイド形成技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K05677
研究機関山口大学

研究代表者

小林 淳  山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (70242930)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード昆虫培養細胞 / 脱皮ホルモン / 細胞接着 / 脂肪体 / 細胞外マトリックス
研究実績の概要

1. 脂肪体の特性を有する細胞集団の構成細胞の分離培養と特性解析
BoMo-Siam B のRNA-seqにより検出された高発現遺伝子上位5%(844個)の中に、カイコ5齢幼虫の脂肪体(FB)、中腸(MG)、マルピーギ管(MT)、卵巣(OV)、精巣(TT)、絹糸腺(SG)の6組織間で発現量に顕著な差異のある遺伝子が49個(FB:24個、MG:17個、MT:2個、OV:6個、TTおよびSG:0個)検出されたことから、BoMo-Siam Bには脂肪体だけでなく中腸など他の組織の特性を有する細胞も含まれており、細胞の形態的多様性からもヘテロな細胞集団であることが示唆された。
2. 脂肪体オルガノイド形成技術の開発と特性解析
BoMo-Siam B に脱皮ホルモン(エクジソンと20ヒドロキシエクジソン(20E))および幼若ホルモン(メトプレン)を培養液に添加したところ、20E処理区において、添加後2日目以降にスフェロイドの顕著な巨大化が観察された。添加後2日目の細胞のRNA-seqにより、20E処理によって発現量が2倍以上変化する遺伝子が1284個(増加:562個、減少:722個)検出された。そのうち発現が増加した遺伝子には、基底膜を構成する細胞外マトリックス分子のラミニンやコラーゲン、細胞接着に関与するカドヘリンやインテグリンなどが確認された。一方、減少した遺伝子には、コラゲナーゼが含まれていた。ただし、その後の qRT-PCR分析では、一部の遺伝子のホルモン応答が再現されず、20Eによる細胞接着効果にも変動が見られたことから、何らかの原因で20Eに対する反応性の低下が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新たに樹立されたカイコの細胞集団について、詳細なトランスクリプトーム解析により脂肪体細胞だけでなく中腸などの特性を有する細胞も混在していることが確認され、さらに昆虫ホルモンの一つである20Eの添加により、細胞接着に関与する遺伝子発現の変動が起こり、スフェロイド形成が促進されること、並びに20Eに対する反応性の変動を明らかにできた。これらの知見から、今後のオルガノイド形成技術開発に重要な新知見と解決すべき課題が明白となり、研究計画に沿って着実に遂行できたと判断される。

今後の研究の推進方策

1. 脂肪体の特性を有する細胞集団の構成細胞の分離培養と特性解析
ヘテロな増殖分化細胞集団BoMo-Siam Bおよび分離後の構成細胞のトランスクリプトームを20Eへの反応性も含めて比較解析する。また,カイコ核多角体病ウイルスなどの昆虫ウイルス感染性についても比較解析し、構成細胞の特性の異同を明らかにする。
2. 脂肪体オルガノイド形成技術の開発と特性解析
前項において20Eによるスフェロイド形成促進効果が最も高い構成細胞を用いて、20E投与量並びに他のホルモンの同時投与などによりオルガノイド形成の可能性を検証し,昆虫細胞のオルガノイド形成の基本技術開発を試みる。また,昆虫ホルモンにより形成促進されたスフェロイドあるいはオルガノイドのトランスクリプトームや、カイコ核多角体病ウイルスなどの昆虫ウイルス感受性を明らかにし,脂肪体などの生体組織と比較することにより,in vitro実験系としての実用性を検証する。また,将来の有用物質生産や食資源などの新規利用技術開発への応用の可能性についても検討する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] スフェロイドを形成するカイコ胚子由来新規培養細胞の特性解析2023

    • 著者名/発表者名
      森本 颯斗, 吉永 侑生, 小林 淳, Ratree Wongpanya
    • 学会等名
      第46回 日本分子生物学会年会

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公開日: 2024-12-25  

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