研究課題/領域番号 |
22K05679
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
舘 卓司 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (20420599)
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研究分担者 |
中村 剛之 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (00526486)
藤田 龍介 九州大学, 農学研究院, 准教授 (70553775)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 衛生害虫 / バーコーディング / ウイルス叢 / 鳥インフルエンザウイルス / クロバエ / ニクバエ |
研究実績の概要 |
現在,日本の衛生昆虫学をとりまく状況は悪化の一途をたどっている.大学の講座や国の研究機関等の多くは改組などによって吸収・縮小され,消滅したところも少なくない.当時,最前線で研究していた多くの分類学者もすでに退職されており,国内において分類や同定に関する問題に十分に対応できていない.この状況に対して,本研究では日本産双翅類の衛生害虫に関して,従来の専門家の詳細な形態学的な検討によってのみ行われていた同定システムに,遺伝情報(ミトコンドリアCOI領域_バーコーディング領域ほか)も併せた参照標本(レファレンスコレクション)を再構築することを目的とする.特に,当該年度ではクロバエ類の17種194個体のバーコーディング情報を明らかにして,分子系統樹を作成した.その結果13種は統計的に信頼性の高いクレードを形成し,かつ近縁種から明確に区別された.すなわち,バーコーディングによる簡便な同定システムは十分に適応できると言える.これは,分類学者の減少に伴う同定に関する問題の解消だけでなく,破損した個体の一部や幼虫などの同定が困難な状況でも,種名を明らかにすることができる.しかし,一部のキンバエ類の種(キンバエーミドリキンバエおよびスネアカキンバエーコガネキンバエ)では,バーコーディング情報による同定できないことが示されため,注意が必要である.また,高病原性鳥インフルエンザが日本各地で発生し,鹿児島県出水市におけるオオクロバエからこのウイルスが検出され,媒介にハエが大きく関与していることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
衛生害虫であるクロバエ科やニクバエ科に関するDNAバーコーディング情報の蓄積は,予定通り進んでいる.ウイルス解析でも,オオクロバエが高病原性鳥インフルエンザウイルスの媒介を示唆するデータを得ることができている.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,衛生害虫の遺伝情報の基盤整理に努める.特に,ニクバエ類およびアブ類のバーコーディング情報の蓄積を進めるとともに,ウイルス解析もおこないウイルス叢を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通りの使用だが,端数が生じたため
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