研究課題/領域番号 |
22K05686
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研究機関 | 株式会社生命誌研究館 |
研究代表者 |
小田 広樹 株式会社生命誌研究館, その他部局等, 主任研究員 (50396222)
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研究分担者 |
鈴木 勇輝 三重大学, 工学研究科, 准教授 (50636066)
西口 茂孝 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 特任研究員 (50873121)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | クラシカルカドヘリン / 細胞間接着 / DNAオリガミ / 昆虫 / ショウジョウバエ / 分子進化 |
研究実績の概要 |
クラシカルカドヘリンを接着成分とする細胞間接着システムは動物細胞の自己組織化能力と形態形成能力の基盤を成す分子装置である。細胞間の接着界面を構成するカドヘリン細胞外領域は分子長の大きな状態を祖先として、脊椎動物と昆虫の系統で独立に起ったドメイン欠失で異なった短縮化を受けたと考えられている。このことから脊椎動物と昆虫の細胞間接着の構造的仕組みは大きく異なることが示唆されるが、脊椎動物以外でカドヘリン分子間の結合様態を説明するデータは乏しい。本研究では、ショウジョウバエの2つのクラシカルカドヘリン、派生型(昆虫系統特異型、分子長が小さい)DEカドヘリンと祖先型(左右相称動物広範分布型、分子長が大きい)DNカドヘリンに注目し、クラシカルカドヘリンの接着原理と進化原理の解明に挑む。研究の第一段階は、直方体にデザインしたDNAオリガミ構造体を用いてカドヘリンの接着状態をin vitroで再構成し、接着界面の分子様態を直接観察できる実験系を構築することである。22年度の研究では、DNAオリガミ構造体のひとつの側面に等間隔に5カ所のビオチン(bio)修飾部位を設置し、そこにストレプトアビジン(SA) が確実に結合することを、アガロース電気泳動、透過型電子顕微鏡、高速原子間力顕微鏡を用いて確認した。さらに、精製したDEカドヘリンの細胞外領域の断片をSNAPタグを介してビオチン化し、それをDNAオリガミ-bio-SA構造体に連結できることを確認した。並行して、ビオチン化したカドヘリン断片がSAでコートされたマイクロ磁性ビーズ(SAビーズ)に混和後速やかに連結し、短時間の振盪でカドヘリンを介した集合形成が起こることを確認した。この集合形成条件において、SAビーズ表面のカドヘリン分子の平均密度を概算することができ、DNAオリガミ上に配置したbio修飾部位の間隔距離の妥当性を評価することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初の計画ではストレプトアビジン(SA)が4量体であることに起因する実験的煩雑さを回避する目的で単量体ストレプトアビジン(mSA2)の使用を考えていたが、mSA2では結合力が弱いことが問題となって使用を断念した。しかし、DNAオリガミ-bio-SAの作製と精製が容易に実現したこと、SNAPタグを用いたカドヘリンのビオチン化が高効率で容易であったこと、SAが4量体であってもおそらく立体障害でDNAオリガミとカドヘリンの連結が煩雑化しないことが判明したこと、などからスムーズに当初の目的を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
カドヘリンを連結したDNAオリガミが集合し、電子顕微鏡で観察できる条件を検討する。DNAオリガミやカドヘリンの濃度及び混合比率、混合後の振盪の時間や回転数など、さまざまな条件検討が必要になる。現在までのところ、派生型のDEカドヘリンで条件検討を進めているが、祖先型のDNカドヘリンでも同様の条件検討を行い、接着界面の分子様態を異なるカドヘリンで比較解析できる再構成系の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
DNAオリガミの電子顕微鏡観察のために委託解析費用を初年度に見込んでいたが、本格的な観察が23年度にずれ込んでいるため。
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