研究課題/領域番号 |
22K05696
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
畑瀬 英男 近畿大学, 農学部, 非常勤講師 (10512303)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ウミガメ / 集団サイズ / 性比 / 孵化特性 / 屋久島 |
研究実績の概要 |
絶滅が危惧されている生物を適切に保護管理するためには、何が個体数の増減を引き起こしているのかを理解する必要がある。本研究では、環境省レッドリストにおいて絶滅危惧IB類に指定されている多回繁殖生物アカウミガメを対象に、生活史の出発点である「発生」の特性が、集団サイズの決定要因になっているのかを検証する。 本年度は、北太平洋最大のアカウミガメの産卵場である屋久島において、気温の季節的上昇が本種孵化幼体の巣からの脱出成功率や体サイズなどの特性にどのような影響を及ぼすのかを調べた。その結果、屋久島永田浜においては、気温が上昇しても本種の孵化特性に負の影響が生じないことが分かった。これは永田浜の粗くて白い砂や高い雨量が、砂や巣の温度上昇を緩和し、砂を常に湿らせているからであろうと考えられた。ウミガメの集団サイズには生活史初期の発生環境が大きく関わっていることが示唆され、絶滅危惧生物ウミガメの保護増殖にはどのような孵化環境を備えた砂浜を用いるべきかを考える際の一助となった。この成果を査読付き原著論文として出版するとともに国際学会で発表した。 また発生中の温度で性が決定するウミガメの「性比」の側面からも、なぜ屋久島で産卵するアカウミガメの集団サイズが大きいのかを考察すべく、実際に繁殖に関わっている雌雄の割合である「実効性比」算出のための遺伝子分析を開始した。過去に屋久島で孵化特性の調査時に採取して冷凍保存していた微量の親ガメの肉片や子ガメの鱗板からDNAを抽出し、マイクロサテライトをPCR増幅後、シーケンサーで対立遺伝子サイズを決定するという、一連の解析作業を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
屋久島におけるアカウミガメの孵化特性に関する調査成果を、査読付き原著論文として出版するとともに国際学会で発表できた。また実効性比算出のための遺伝子分析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
実効性比算出のための遺伝子分析を終了させて、論文執筆に取りかかる。また屋久島における過去の気象データを用いて、温度依存性決定生物であるアカウミガメの「一次性比(生活史初期の雌雄の割合)」の算出を試みる。一次性比と実効性比を比較し、屋久島で繁殖するアカウミガメの性比が成長とともに変化するのか検証する。性比の変異性もしくは安定性がウミガメの集団サイズとどのように関わっているのか考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子分析の進捗状況に応じて、業者への解析委託のタイミングが決まるため。今後、解析委託費に大半を費やす予定である。
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