研究課題/領域番号 |
22K05700
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研究機関 | 公益財団法人山階鳥類研究所 |
研究代表者 |
澤 祐介 公益財団法人山階鳥類研究所, その他部局等, 研究員 (00896011)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 生息地選択 / カリガネ / 採食内容 / 環境利用 |
研究実績の概要 |
越冬地におけるカリガネの生息地選択解明のため、本年度は、カリガネの発信器による追跡調査、調査地におけるカリガネの利用環境・栄養状態の季節変化、食性解析のための糞サンプルの採取を実施した。 発信器による追跡調査では、現在、4羽を継続追跡中である。2022年12月にカリガネ11羽を宮城県の越冬地において捕獲し、そのうち4羽に発信器を装着した。発信器装着個体は2023年2月まで越冬地に滞在した後、3月に北上を開始、5月上旬まで北海道サロベツに滞在した。使用している発信器は、携帯電話の通信網を使用して位置情報を送信する機種である。圏外に鳥がいる場合は発信器本体に位置情報を蓄積し、再び圏内に入った際に蓄積した情報を送信する。5月以降は、ロシアの繁殖地に向かっており圏外に滞在中のため、通信が途切れている。2023年11月には再度、日本に帰還することで繁殖地のデータも合わせて取得予定である。 カリガネの利用環境については、2022年11月から2023年2月にかけて2週間に2日間のペースで宮城県登米市内の調査地約600haにおいて、カリガネの個体数および採餌した農地の特徴、その時のカリガネの脂肪蓄積状態を記録した。その結果、11月は非耕起の水田を頻繁に利用し、12月には牧草地の利用が増加するが、1月に入ると大豆畑の利用も見られた。農地の管理方法の違いにより、カリガネの利用頻度が異なることが示唆された。 糞サンプルの採取では、11月から2月にかけて80サンプルを収集した。2023年度に食性解析を実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は宮城県の越冬地におけるカリガネの個体数が約270羽であったが、このうち11羽を捕獲することができ、順調に発信器追跡を開始することができた。糞サンプルもおおむね順調に集めることができ、予備解析を実施予定であり、その結果を踏まえ2023年度に追加サンプルを補充する。また、カリガネの栄養状態の季節変化については、現在、邦文で国内誌に投稿すべく論文を作成中である。概ね計画通りに研究は進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、発信器個体の追跡継続・新規追跡、糞サンプルの拡充と分析を重点的に行う 発信器追跡では、12月に新規個体3羽を捕獲し発信器を装着する。また、発信器個体の位置情報を解析することで、利用した農地の特徴を定量的に分析する。 食性解析では、糞のサンプルが不足している時期(1~2月)のサンプルを拡充したうえで、DNAメタバーコーディングによる食性解析を重点的に行う。 これらのデータについては、中間報告として、日本鳥学会大会(2023年9月開催)にて発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
採取した糞サンプルのDNAメタバーコーディング分析を次年度に持ち越したため。 糞サンプルは80ほど収集したが、DNAメタバーコーディングを業者に委託する前の処理として、DNAの抽出、糞のホスト判定(糞がカリガネのものであるか判定)が必要であり、その作業を2023年度に持ち越したため。
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