研究課題/領域番号 |
22K05704
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研究機関 | 大阪市立環境科学研究センター |
研究代表者 |
秋田 耕佑 大阪市立環境科学研究センター, その他部局等, 研究員 (00828949)
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研究分担者 |
戸金 大 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 助教 (40445854)
小巻 翔平 岩手医科大学, いわて東北メディカル・メガバンク機構, 講師 (90789629)
上田 昇平 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 准教授 (30553028)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | トノサマガエル / 国内移入種 / 遺伝的撹乱 |
研究実績の概要 |
2023年度は,遺伝子解析に用いる研究サンプルの採集を継続して実施するとともに,ミトコンドリアDNAに基づく分子系統解析を実施した. 大阪府内を中心に計76地点から得た231個体のトノサマガエルについて,ミトコンドリアDNAのシトクロームb遺伝子(1,143bp)の塩基配列を決定し,遺伝子型を比較した結果,73のハプロタイプが検出された.国内移入集団の生息が疑われる大阪市内からは5つのハプロタイプ(h1ー5)が検出され,そのうちh1ー3は大阪府内の他地点でも確認されたが,h4は兵庫県と滋賀県,h5は島根県と山口県にのみ共通して確認された.特にh5はh1ー4との遺伝的差異が大きく,大阪市から地理的に離れた中国地方でのみ確認されていることから,中国地方に由来する移入系統であることが示唆された.一方,大阪府及びその周辺地域で優占するh1は青森県及び愛媛県において飛地的に確認されたことから,それぞれの地域に人為的に移入した可能性がある.これらの地域においては在来集団と国内移入集団との間で交雑が進み遺伝的撹乱が生じている可能性があり,今後,その範囲が拡大するおそれがある. 本研究で得られた成果は,トノサマガエルの自然分布域に他地域由来の移入系統が混在することを裏付ける科学的根拠となり,他地域への持ち出しや持ち込みといった人為的な移動運搬を抑制する働きかけの動機を与えるなど,国内移入種の対策を推進する上で重要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査予定地の環境改変により実施を見送っていた標識再捕獲調査及び個体追跡調査に関して,2023年度は新たな調査地の探索に取り組んだものの,申請当初に計画していた調査の実施条件に見合う生息地(トノサマガエルの生息密度が高く,かつ複数の生息地が隣接している場所)を見つけることができず,調査を開始することができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,2022年度および2023年度に採集した標本からゲノムワイド関連解析(MIG-seq法を想定)によりSNPsを得て集団構造解析を行い,トノサマガエル種内の遺伝的撹乱の状況を明らかにする予定である.実施を見送っていた標識再捕獲調査及び個体追跡調査に関しては,移入系統の生息が示唆された大阪市内の都市緑地において実施することを想定して必要となる許認可を取得した上で調査を開始し,研究対象種の移動分散能力を評価する.これらの調査・解析に加え,本種の潜在的な生息適地をニッチモデリングにより推定し,現在遺伝的撹乱が確認されている範囲と移動分散能力を踏まえた上で,移入系統の分布拡大プロセスと今後遺伝的撹乱が及びうる地理的範囲について総合的に考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に予定していた標識再捕獲調査及び個体追跡調査の実施を見送ったため,当該調査に要する物品費並びに旅費に余剰が生じた.次年度使用額は,当該調査に要する物品(個体追跡用発信器,受信器,アンテナ)の購入費と旅費,及びゲノム縮約解析に要する試薬代等に使用する予定である.
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