研究課題/領域番号 |
22K05711
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
藤原 道郎 兵庫県立大学, 緑環境景観マネジメント研究科, 教授 (80250158)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 放置竹林 / 竹稈再生 / タケノコ / 防護柵 / 成長段階 / モウソウチク / イノシシ / ナルトサワギク |
研究実績の概要 |
本研究では、イノシシによるタケノコ摂食(成長初期段階)、穂先タケノコ採取(成長中期段階)、竹稈伐採(成長終期段階)によるモウソウチクへの竹稈減少数と新出竹稈数を比較することから、各成長段階での攪乱が新稈再生に与える影響を明らかにすることを目的とする。さらに間伐竹稈から竹チップを作製しマルチ材とすることで、特定外来生物ナルトサワギクに対する竹チップ(モウソウチク破砕物)の地表面被覆による再定着防止(防除)効果を明らかにすることを目的とした。初年度はイノシシの影響に着目しモニタリング調査を行った。 イノシシの影響のないイノシシ防護柵内の出旬数は36.0±10.6(平均±SD,100m2あたり,以下同じ)に対し,イノシシの影響のある防護柵外の出旬数は18.0±7.2と防護柵内の50.8%となっていた.成長が途中で止まる稈(トマリタケノコ)も見られ,防護柵内で13.3±1.2,防護柵外で8.0±4.0と防護柵外でトマリタケノコは少ない傾向にあった.高さ10m程度に成長した稈は,防護柵内で22.7±11.7,防護柵外で8.7±3.1とイノシシの影響がある場合は無い場合と比べ43.9%の稈数となった.防護柵外において前年12月から当年6月までに確認されたイノシシによる食痕数は54.0±24.2であった.防護柵の内外で成長稈数が同じと仮定すると,イノシシにより出旬前に食べられ成長を阻害されたタケノコは14.0±12.2と推定された.これはイノシシの食痕数の約25.3%にあたる.すなわちイノシシが出旬前に掘り起こして食べるタケノコのうちの4分の1程度が,イノシシの影響のない場合に竹稈として成長するものであったと推定された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に想定していたモウソウチクの初期成長段階での攪乱の影響解明として,イノシシによるタケノコ摂食数とその季節変化,摂食されたタケノコのサイズとその季節変化,新稈の数とサイズなどを明らかにすることができたこと,また途中段階で成長を止めるトマリタケノコの量的評価まで行うことができた.さらに摂食を行ったイノシシの個体数解析中であり,ほぼ当初想定した目的を達することができたといえる.
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今後の研究の推進方策 |
2年度以降の推進方策は,モウソウチクの成長中期段階での攪乱の影響の解明として採取された穂先タケノコの数とサイズおよびその季節変化,穂先タケノコから製造された食品等の量の算出,新稈の数とサイズを明らかにする.また,モウソウチクの成長終期段階での攪乱の影響の解明として間伐数とサイズ,間伐竹稈から得られた竹チップ量,新稈の数とサイズを明らかにする.さらに竹マルチによるナルトサワギク再定着抑制効果と必要な竹稈量の解明として,特定外来生物ナルトサワギクの再定着防除に必要な竹稈量の算出を行う. これらにより,竹を資源として活用することで地域の外来種防除の持続可能性を高めるための基礎的データの蓄積ができ、竹林の資源化と持続的な外来種防除につなげることとする.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会EcoSummit2022に参加発表予定だったが,COVID19により延期となったことで,旅費その他の支出が大幅に減少したことが主な理由である.EcoSummit2023として2023(令和5)年度にオンサイトでの開催が決定しており,すでに登録済みであることから,適正な次年度使用となる.
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