研究課題/領域番号 |
22K05721
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研究機関 | 岐阜県森林研究所 |
研究代表者 |
玉木 一郎 岐阜県森林研究所, 森林環境部, 研究員 (00898091)
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研究分担者 |
原田 英美子 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (20232845)
大洞 智宏 岐阜県森林研究所, 森林環境部, 研究員 (30463160)
大槻 達郎 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 主任学芸員 (60760189)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 伊吹山 / 薬草園 / 植物 / 遺伝情報 / 次世代シーケンサー / 自生種 / 移入種 |
研究実績の概要 |
薬草園伝説を裏付ける植物の一つであるイブキノエンドウの国内(伊吹山と北海道)と海外サンプルの葉緑体配列とゲノムワイドSNPデータを取得した。 イブキノエンドウの標本調査を行い,北海道中部で明治時代初期の標本があることが分かった。また,2021年の北海道南部の標本から,これまでに知られていなかった場所にもイブキノエンドウが生育していることが分かった。なおこの自生地は,これまでの北海道で知られてた人の生活に近い自生地とは異なり,自然度の高い場所であった。 国内サンプルは葉緑体配列とゲノムワイドSNPの両方で単系統となった。もともと北海道のイブキノエンドウは伊吹山とは別のルートで持ち込まれたと考えられていたが,起源が同一である可能性が示された。安土桃山時代と明治時代初期という異なる時代に,近い起源の場所から持ち込まれたというのは考えにくく,これらの場所にもとから生育していたと考えるほうが合理的である。 国内サンプルの遺伝的構造を調べたところ,北海道で優占するクラスターが伊吹山のサンプルにも混合していることが分かった。そこで,集団分岐解析を行ったところ,国内の2系統は最終氷期の間に分化したことが示された。 集団サイズ変化解析の結果,伊吹山系統は江戸時代以降に急激な集団サイズの減少を,北海道系統は5000年前以降に緩やかな集団サイズの減少を示した。それぞれの原因には,人為的な採草圧と完新世の気候変動が考えられた。 以上より,イブキノエンドウは外来種ではなく伊吹山と北海道の一部にのみ生育する自生種の可能性が高いことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度,当初計画していた伊吹山の自生種のサンプリングを行った結果,一部の植物はシカの食害で採取できなかったものがあった。そこで来年度,種類を検討し直して追加でサンプリングを行う必要があるため。採取できたサンプルについては,実験を進めDNA抽出までを済ませることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で明らかになったイブキノエンドウの遺伝的変異について学会発表と論文投稿を行う。 伊吹山の自生植物について,サンプリングを追加で行い,DNA抽出とゲノムワイドSNPによる遺伝子型決定を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
採取できなかったサンプルがあり,そのために予定していた実験が実施できなかったため。
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