研究課題/領域番号 |
22K05728
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
三木 直子 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (30379721)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Salix psammophila / 中国 / 生理生態的形質 |
研究実績の概要 |
乾燥が樹木枯損に与える影響は非常に大きく、樹木の生存・分布を決定づける極めて重要な要素の一つである。気候変動に伴う降雨の不安定化や温暖化によって、将来的により深刻な乾燥影響が予測される中、樹木の乾燥抵抗性機構の理解やそれに関わる生理生態的形質の評価の重要度は極めて高い。樹木はそれぞれの産地の環境への適応進化の結果として遺伝的に変異する。そのため同じ樹種であっても、遺伝子型の違い、すなわち産地の違いによって形質が異なる可能性がある。また、同じ産地内においてもその集団(個体群)間や集団内において、遺伝的多様性の違いなどにより形質が異なる可能性がある。本研究は中国北部のクブチ砂漠とモウソ砂地(ともにオルドス市)を産地とするヤナギ科の落葉広葉樹であり、代表的な緑化木本種であるSalix psammophilaについて、産地内の異なる個体群を対象として、乾燥抵抗性に関わる生理生態的形質の違いを明らかにすることを目的として、(1)個体サイズ(樹冠面積、樹高、主軸長、主軸地際直径)、(2)葉(面積、LMA、葉の水分生理的形質(膨圧維持能など))および(3)枝(通水阻害に対する抵抗性の指標である材密度、木部面積に対する葉面積の比)の各種生理生態的形質について評価した。測定には本種の産地に近いオルドス市内の苗畑に植栽されている17の天然集団(個体群)由来の個体を用いた。その結果、水分生理的形質の一つである体積弾性率を除き、個体群間で有意な差はみられなかった。各形質の変動係数については、葉の形態的形質や水分生理的形質である体積弾性率は高く、樹高、材密度といった形質は低い傾向があり、枝よりも葉の各種形質が変異しやすい可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にコロナの関係で行うことのできなかった内容も含め、予定していた現地測定についてほぼ予定通り実施した。
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今後の研究の推進方策 |
中国からの国外持ち出しが不可であった葉試料について、中国国内で炭素・窒素含有率の分析を進めるとともに、各種生理生態的形質の個体群内の変異をより評価できるよう個体数を増やして測定を行う予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
葉の炭素・窒素の分析が次年度に持ち越しとなったため、それにかかわる費用の一部について次年度への繰越となった。繰越金については、次年度の分析において適正に使用する予定である。
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