研究課題/領域番号 |
22K05736
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
柴田 銃江 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10343807)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 豊凶 / 落葉広葉樹林 / 受粉効率 / 捕食者飽食 |
研究実績の概要 |
気候変動にともなって樹木の豊凶が10から数10年のスケールで変化していることが世界各地で報告されるようになった。豊凶の年代変化によって、繁殖にかかるスケールメリット(効率的に受粉し、種子被食を回避する)が失われる可能性が示唆されるも、まだ十分には検討されていない。そもそもブナ科やマツ科以外では豊凶のパターンすらわかっていない樹種も多い。そこで、落葉広葉樹林の多様な樹種について、豊凶の年代変化パターンを明らかにするとともに、繁殖成功への影響を評価する。 本年度も、主要種の豊凶年代変化パターン把握のため茨城県北部にある小川試験地の種子散布観測を継続した。また、受粉効率をしいな率によって評価するため、小川試験地で採取されてきた種子試料の一部を抽出し、その中身を精査した。しいな率は、被食痕のない見かけ上健全な成熟種子のうち、子葉が発達していない種子の割合とした。対象樹種は、しいな種子を形成するミズメ、イヌシデ、ブナ、イヌブナを選定した。過去の種子試料の保存状況が比較的良好な2002年から2021年まで(ブナは2022年まで)の約20年間のうち、凶作年を除く各年について、上述の成熟種子を数10から数100個抽出し、種子カーネルの状態を確認した。 その結果、ミズメとイヌシデでは、しいな率の大きな増減は認められなかった。一方、ブナとイヌブナでは、まだ十分なサンプル年が得られず曖昧な結果ではあるものの観測後半で減少している傾向が見られた。これは日本のブナ属では受粉効率が低下していないことを示唆する結果であり、これまで欧州のブナでは報告されている反応とは異なっていた。このような地域間での反応の違いは本当にあるのか、観測年数を増やすとともに、開花同調性や雄花生産量との関係も見ながら再検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目に計画していた豊凶の年代変化の定量分析は、まだ一部の樹種にとどまっている。一方で、2年目計画の受粉効率年代変化の検証にかかる試料分析作業は順調に進んでいる。これらのことから、やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
3年目においても、引き続き主要種の豊凶年代変化パターンを把握するため、小川試験地における種子散布観測の継続とデータ整備を行う。また、捕食者回避効率の評価として、イヌシデなどのクマシデ属やカエデ属の虫害率の年代変化について分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
非常勤雇用費が当初の想定よりも減少したことにともない、当該年度未使用額(次年度使用額)が生じることになった。この未使用額については、次年度の調査出張費用の一部にあてる。
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