研究課題/領域番号 |
22K05747
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
吉村 哲彦 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (40252499)
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研究分担者 |
鈴木 保志 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (20216451)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 架線系集材 / タワーヤーダ / 高性能林業機械 / 生産性 / システム生産性 / 工程数 |
研究実績の概要 |
本研究では、国産材の増産に必要な技術的課題を林業現場から抽出し、それに基づく機械化作業の生産性評価モデルを構築することで、架線系集材の生産性(システム機械生産性およびシステム労働生産性)を向上し国産材の大幅な増産を実現することを目的としている。令和4年度は、日本とヨーロッパの架線系集材システムについてコンセプトレベルで比較を行い、高性能林業機械を用いた架線系集材システムの弱点について、ガントチャートを使ったモデルを構築することで定量的に示すことに成功した。日本型の架線系集材システムの問題は、作業道をベースにして4工程という他工程によって作業を行なうことであり、スイングヤーダによる集材工程とフォワーダによる運材工程の生産速度が運搬距離に依存するので、工程間の生産速度のばらつきが大きくなってしまう。さらに、最も生産速度が高いプロセッサ(ハーベスタ)による造材工程が、運搬距離依存の集材工程と運材工程に挟まれていることが生産性の観点で不利になっている。一方、ヨーロッパではプロセッサ(ハーベスタ)と一体になった一体型タワーヤーダを用いることで、フォワーダによる運材工程を省略できるだけでなく、集材工程と造材工程が一体化できることから2工程化が実現し高い生産性を達成している。一体型タワーヤーダでは、搬器が自動往復する時間に土場側のオペレータが造材作業に従事することで、システム全体としての2人作業が実現している。以上のように、日本型の架線系集材システムの生産性が低い原因が明らかになり、ヨーロッパ的な方法を導入することで改善することが方向性として示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に関連する研究成果について、口頭発表・論文発表ともいくつか行なうことができた。さらに、架線系集材の生産性向上の方法を解説した林業現場への啓蒙書をAmazon KDP (Kindle Direct Publishing) から出版した。架線系集材の生産性評価モデルの構築から生産性を評価する研究も順調に進んだが、この成果をまとめた論文を国際英文誌に投稿したものの力が及ばずリジェクトとなってしまった。とはいえ、当該論文の修正と再投稿の準備はすでにできており、研究自体に遅れがあったわけではないので、評価としては「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は架線系集材の生産性評価のためのモデルをガントチャートを用いて構築したが、令和5年度は様々な作業システムに対応でき、柔軟性と予測精度の高いモデルをシステムダイナミクスシミュレーションのソフトウェアを用いて構築する。このモデルを用いて架線系集材の生産性を車両系集材との比較により評価するが、そこで用いる生産システムは、作業道を基盤とする車両系集材システム(タイプA)、ハーベスタベースと作業道をベースにした車両系集材システム(タイプB)、作業道を基盤とする架線系集材システム(タイプC)、コンビ型タワーヤーダを使ったシステム(タイプD)である。これと並行して、林業現場で高性能林業機械による生産性のデータや資料を収集する。令和4年度は架線系集材の生産性評価のためのモデルを構築して日本型とヨーロッパ型の生産性の比較を行い国際英文誌に投稿したもののリジェクトという結果になった。そこで、令和5年度はこの論文の修正を行って、再度国際英文誌への再投稿を試みる。研究成果の公開や社会還元という観点では、業界誌「機械化林業」に隔月連載が決まっており、着実に進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際英文誌(オープンアクセスジャーナル)への投稿料について、為替変動も見越して30万円を確保していたが、投稿結果がリジェクトであったため未使用になってしまった。この論文は次年度に再投稿を試みるため、それが掲載されれば繰越分を使用することになる。学会などのアカデミックイベントがオンラインで開催されているため旅費の使用額が増えなかったが、コロナ禍が収束に向かっているので、次年度はこれまで以上に旅費の支出が増えることが考えられ、それには繰越分を使用していきたい。次年度はデータ分析用に新たなソフトウェアが必要となっていること、コロナ禍の終了に伴い林業機械の運用に関する情報収集の機会が増えることから、それらに対して繰越分を有効に活用していく所存である。
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