研究課題/領域番号 |
22K05772
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
鈴木 悠造 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 (30883748)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | リグニン / 低分子フェノール類 / 微生物代謝 / ポリマー原料 / キラル / S体3-カルボキシムコノラクトン |
研究実績の概要 |
本研究では、リグニン由来の新しいポリマー原料を創出するために、微生物によるリグニンの分解過程で中間代謝物として生成するキラル化合物「3-カルボキシムコノラクトン」に着目した。本研究の目的は、Neurospora crassa N150株由来の立体選択的なカルボキシムコン酸ラクトン化酵素を利用して、バニリンやp-クマル酸等のリグニン由来低分子フェノール類から、3-カルボキシムコノラクトン(S体とR体)の2種類の光学活性体を単一化合物として生産する技術を開発することである。 令和4年度は、S体3-カルボキシムコノラクトンの生産系を構築した。Neurospora crassa N150株由来のカルボキシムコン酸ラクトン化酵素遺伝子に加えて、Sphingobium sp. SYK-6株やPseudomonas putida KT2440株由来の種々の変換酵素遺伝子をクローニングすることで、リグニン由来低分子フェノール類からS体3-カルボキシムコノラクトンを生産するためのプラスミドを作製した。作製したプラスミドをS体3-カルボキシムコノラクトンの代謝機能をもたないPseudomonas putida PpY1100株に導入することで、S体3-カルボキシムコノラクトンの生産株を育種した。 育種した生産株を用いて、バニリンおよびp-クマル酸の標品を原料とした生産試験を実施し、S体3-カルボキシムコノラクトンが効率良く生産できる培養条件を検討した。検討の結果、90%以上のモル収率でS体3-カルボキシムコノラクトンを生産できる培養条件を確立した。さらに、アルカリ処理を施したタケ材由来抽出物を原料とした生産試験を実施し、多糖由来成分等の様々な夾雑物が含まれる複合系においても、抽出物中に含まれる低分子フェノール類からS体3-カルボキシムコノラクトンを生産できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画どおり、バニリンやp-クマル酸等のリグニン由来低分子フェノール類を原料とした、S体3-カルボキシムコノラクトンの生産系の開発に成功した。また、タケ材由来抽出物中に含まれる低分子フェノール類からもS体3-カルボキシムコノラクトンが生産できることを明らかにした。以上の結果から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
R体3-カルボキシムコノラクトンの生産系の構築に向けて、リグニン由来低分子フェノール類からラセミ体の3-カルボキシムコノラクトンを生産する条件を確立する。また、培養液中からS体3-カルボキシムコノラクトンを抽出し、再結晶化で精製する条件を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が当初の計画よりも若干早く進展したため、少額の次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額については、次年度の物品費に盛り込んで使用する予定である。
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