研究課題/領域番号 |
22K05793
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
徳永 貴久 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 主任研究員 (50404009)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 懸濁物質 / 塩分計 |
研究実績の概要 |
海底付近に高濃度に存在する懸濁物質(fluid mud)は、重要水産資源である二枚貝類の斃死要因の1つである。海水中の懸濁物質は通常濁度計で観測が行われるが、光学的原理に基づいた同計器では海底直上での観測が非常に困難であった。高濃度の懸濁物質が海水の電気伝導度に大きく影響を及ぼすことを発見し、その観測における塩分計の活用の可能性を提示した。本課題では、塩分計による懸濁物質の簡便かつ安価な計測方法を確立することで塩分と懸濁物質濃度を同時に計測できる画期的なマルチセンサーを開発し、現場への適応条件の最適化を行うことを目的とする。これにより、海底付近における懸濁物質の様態が詳細に解明され、二枚貝類の斃死要因の解明や対策研究の方向性を決定する上で不可欠な知見が得られるものと期待される。 今年度は泥分を変化させた場合の塩分センサー値の変化について室内実験を行った。ろ過海水に懸濁物質を投入し、塩分を多項目水質計で計測した。その結果、初期塩分(ろ過海水)が小さくなると塩分低下率は線形的に小さくなることが明らかになった。また、泥分を20%-100%の9段階に変化させて同様な実験を行った。泥分率の調整には豊浦標準砂と市販のモンモリロナイトを用いた。実験結果を用いて、塩分と懸濁物質濃度との関係を一次式で表し、塩分低下係数と泥分率とを関係付けた。さらに、懸濁物質は塩分センサー内の海水体積減少のみに作用、つまり海水と懸濁物質とのイオン交換が無いことを仮定し、懸濁物質の粒子密度依存性を理論的に検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画よりも実験・解析に時間がかかり、実験条件を当初計画よりも増やしたため、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
この研究課題は、精度良い実験結果を用いて海底付近の現場の塩分データを懸濁物質濃度へ変換させるかが重要なため、実験条件を増やし、精度を高めることは不可避であった。この研究遂行の遅れは今後に影響するものの、海底付近の懸濁物質濃度の推定は可能であり、より精確な推定を行うために今後も精度良い室内実験結果を得られるようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた室内実験が長引いたため、現場の堆積物を用いた実験を行うことができず当該年度支出が小さくなった。来年度は実験を行うため、計画的に予算執行を行いたい。
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