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2023 年度 実施状況報告書

頭足類の体色同期機構の組織化学・行動学的解析による視覚コミュニケーション能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K05809
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

杉本 親要  慶應義塾大学, 法学部(日吉), 助教 (00813718)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード頭足類 / ダンゴイカ / ボディーパターン / 模倣 / 同期 / コミュニケーション
研究実績の概要

本研究は、イカやタコを含む頭足類が、高度に発達した脳や眼、神経制御可能な無数の色素胞といった情報処理機構を獲得するに至った背景を、コミュニケーション能に着目して解明することを目標としている。そこで、色素胞動態の組織および行動学的解析から体色同期機構の詳細を調べることで、頭足類の視覚コミュニケーションの成立過程を明らかにすることを目的とする。
この目的を達成するため、本研究では体色変化に関わる信号要素とその組み合わせの評価により体色同期機構の分析を行う。本年度は、沖縄島近海に生息するヒメダンゴイカを対象とし、行動と組織の観察により、体色信号の分類や組み合わせについて調べた。その際、平穏時に加え、潜砂行動のための底質砂の有無や、餌生物であるエビ類、忌避刺激としてのピンセットや社会刺激としての同種他個体の提示時の観察も行うことで、体色変化の機会を増やすことに努めた。また、硫酸マグネシウムやエタノールによる麻酔下と安楽死に向かう過程の体色変化も観察した。さらに、表皮のパラフィン切片にH・E染色を施し、色素胞と反射性細胞、周辺組織の配置を組織学的に評価した。
皮下には、赤色や黒色の色素胞が分布する層の下に、扁平な反射性細胞が密に積層していた。また、背側では赤色の色素胞が黒色より高密度、腹側では黒色のみが背側の赤色素胞より高密度、外套後端では両者が等密度、腕では黒色素胞のみが低密度で列状に分布していた。さらに、色素胞の数は体サイズによらず一定である可能性が示唆された。また、反射性細胞層は、背側より腹側が厚い傾向も認められた。これらの結果は、体部位ごとに大きく異なる体色信号の生成機構が、行動観察を通して得られた様々な体色を生むとともに、コミュニケーションのための体色同期に貢献する可能性が見出された点で、視覚コミュニケーションの解明のための重要な布石となる知見として意義がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、一つ目の研究項目である体色信号評価について、組織データと行動データの整備を進めることができ、研究対象種が表出可能な体色信号に関して一定の結果を得られつつある。また、行動実験水槽の改良を進めることができ、体色時系列解析に関する行動実験の効率化により、さらにデータを増やせる見込みであるとともに、位相同期解析に必要な実験個体の対面実験もより実施しやすくなったことから、本研究の目的である体色同期機構の解明がさらに進む見込みである。このように、今後の研究段階を進めていく上での、必要なプロセスを順調に消化できている。

今後の研究の推進方策

今後は、一つ目の研究項目である体色信号評価について、行動データと組織データのさらなる蓄積を進めることで、より詳細な体色時系列解析を行い、研究対象種が表出可能な体色信号の要素をより多く検出する。また、2つ目の研究項目のために、位相同期解析に必要な実験個体の対面実験もさらに進めることで体色信号の組み合わせに関するデータをさらに取得し、一つ目の体色信号評価の結果と合わせて、体色同期機構の分析を行う。さらに、色素胞分布に関する組織化学データや体色信号に関する行動データなどについて、論文としての取りまとめも進めていく。

次年度使用額が生じた理由

本年度に購入を予定していた行動解析用パソコンは購入したものの、動画解析ソフトウェアについては、購入したパソコンに標準装備されているものやフリーウェアによる対応の方が適するとの判断から購入を取りやめたため、次年度使用が生じた。この次年度使用分は、主に行動実験などへの消耗品費として次年度に使用する予定であるが、その他については、研究計画時の最終年度の使用計画通り学会発表や論文投稿など研究取りまとめに向けた予算使用を進める。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] ダンゴイカ類の体各部における色素胞および反射性細胞の配置パターンの評価2024

    • 著者名/発表者名
      山田麻央・池田譲・坪川達也・杉本親要
    • 学会等名
      令和6年度日本水産学会春季大会

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公開日: 2024-12-25  

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