研究課題/領域番号 |
22K05813
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
児玉 圭太 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主幹研究員 (90391101)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 底棲魚介類 / 個体群動態 / 生活史特性 / 環境変動 / 東京湾 |
研究実績の概要 |
東京湾内において、底棲魚介類群集の優占種であるシャコを対象として、再生産期において定期的に野外調査を実施した。特に親の成熟状態ならびに生活史初期の幼生および稚シャコの生態に着目して、空間分布および個体群変動に関与する要因を解析した。東京湾内においては2000年代には底棲魚介類の餌生物であるマクロベントスの密度が減少傾向にあり、餌生物の減少が再生産に及ぼす影響を検討するため、2000年代における産卵期(6~9月)の体長7cm以上の成熟個体割合とマクロベントス密度の関係を調査したところ、両者に有意な正の相関が認められた。この事実は、湾内の餌生物密度の低下により、シャコの性成熟に負の影響が及び、その結果として成熟個体割合の低下につながったことを示唆している。一方、東京湾でシャコの幼若個体(幼生・稚シャコ)を採集し、個体数密度の時空間的変動を調査した結果、2022年の幼生密度は2000年代においては比較的高い水準であったが、着底した稚シャコの密度は低い水準であった。幼生と稚シャコの個体数密度の変動傾向の違いは、幼生の浮遊期間から稚シャコに変態して着底するまでの生活史段階における生残率が加入量を規定していることを示唆する。また、2022年においては、稚シャコの着底盛期の10月以降に大規模な貧酸素水塊は発生せず、11月にはほぼ解消した。この結果より、貧酸素以外に幼生期の生残過程に影響を及ぼす因子が介在しているものと推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天候状況のため野外調査を予定通り実施できない期間があったが、再生産期においては調査を計画通り実施して試料の採集と解析を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
野外調査を継続し、幼生および稚シャコを採集し個体数密度の長期変化を解析するとともに、水平・鉛直分布の季節変化も明らかにする。これに関与する要因を冗長性解析等の手法により推定し、生活史初期段階の生残率に関与する要因の候補を推定する。また、親の小型化にともなう成熟期の晩期化の可能性についても検討し、貧酸素水塊の形成時期との関連を解析することで、近年の低資源量水準への寄与を推定する。また、シャコ幼生とともに採集された動物プランクトンの群集解析を行い、過去の動物プランクトン群集組成に関する文献情報と比較して、近年の幼生の餌利用可能性の変化についても検討を行い、生活史初期の斃死要因の解明を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
海況悪化による調査中止にともない、予定していた現地調査費用および試料分析委託費用に予定額との差が生じた。今年度の現地調査で得られた試料の分析委託において使用する予定である。
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