研究課題/領域番号 |
22K05814
|
研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
多賀 悠子 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(神栖), 研究員 (40737318)
|
研究分担者 |
井上 誠章 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(神栖), 主任研究員 (50713880)
古市 尚基 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(神栖), 主任研究員 (70588243)
大井 邦昭 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(神栖), 主任研究員 (40882600)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 魚礁 / 漁場造成 / 餌場機能 / 環境DNA / 流動場 / 水中ドローン / 酸素消費量 |
研究実績の概要 |
2023年度は、館山沖高層魚礁を対象とした野外調査を夏季、秋季の2回実施し、環境DNA分析用試料の採水、水中ドローンとステレオカメラ撮影による魚類相のバイオマス分布調査、釣獲調査を行うとともに、流向・流速や懸濁物・プランクトン粒子のサイズ分布等の環境情報を取得した。釣獲調査で得られた優占種であるイサキの胃内容物分析を行うことで餌の種組成とサイズ組成を把握し、主餌であった小型動物プランクトン(コペポーダ、クーマ、浮遊性巻貝類など)の空間分布を環境DNA分析および粒子サイズ分布の野外観測結果から検討した。水槽内における行動実験を実施し、イサキの流速毎の酸素消費速度を計測し、流速毎の代謝コストを把握した。2022年度の水理模型実験の結果を詳細解析するとともに、形状の異なる新たな高層魚礁模型1基に対して水理模型実験を行った。さらに、水理模型実験のデータを用いて粒子追跡シミュレーションを行い、魚礁近傍での餌の輸送機構を推定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では環境DNA分析によって魚類相の空間分布を把握する予定であったが、より高解像度で空間分布を把握できる画像解析による検討を進め、局所的流動場解析と対応できる空間分解能での魚類相の詳細な空間分布を把握することができた。胃内容物分析の結果、優占種であるイサキの主餌が当初想定していたよりもかなり小型の動物プランクトンであったことから、餌生物の分布については、環境DNA分析と野外粒子サイズ観測データに加えて、粒子追跡による餌の分布傾向の予測を行った。一方で、小型動物プランクトンを対象に、水槽実験によってイサキの摂餌行動の把握を行うことは困難であったため、実施しなかった。水理模型実験による流動場と輸送機構の把握は当初計画通りの結果を得た。以上から、総合的にはおおむね順調に進んでいると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は野外調査を秋季に一回行い、環境観測、魚類相と小型動物プランクトンの空間分布の把握を継続して行う。また、2022、2023年度の水理模型実験の結果を踏まえて、数値シミュレーションによる高層魚礁の局所的流動場と物質輸送の把握を行い、その結果を基に野外観測時の魚礁周辺での流動場の予測を行う。当初計画では餌生物の熱量計算のため、生体の成分分析を実施する予定であったが、摂餌行動実験が実施できなかったことを受け、実施しない。これまでに蓄積した魚類相、動物プランクトン相および流動場に係るデータをもとに、魚類相の空間分布の形成要因を統計モデルによって検討し、高層魚礁の餌場機能の発現機構について考察する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
水理模型実験に用いる魚礁模型を製作する予定であったが、無償での借り入れできたこと、当初予定していた摂餌行動実験を実施しなかったことから繰り越した。繰越金は環境DNA分析の分析サンプル数の拡充に充てる。
|