研究実績の概要 |
口白症感染魚に特異的に発現する3つのRNA分節(Kuchijirosho-Associated RNA:KAR)について,1)KARのリコンビナントタンパク質の作製,および2)KARを利用したDNAワクチンの開発に関する研究を行った。具体的には以下のとおりである。 1)各KAR- A,-B ,-CのcDNA断片をN末端にHisタグを付与する発現ベクターpET-22b(+)へ組み込み,4種類の大腸菌Escherichia coli株(BL21 DE3, BL21 DE3 pLysS, Rosetta gamiB, Rosetta gamiB DE3 pLysS)に導入し,リコンビナントタンパク質を合成した。その結果,発現プラスミドに導入されたKARsに由来するタンパク質(分子量:約50 kDa)が発現し,KAR-A,-B, -C の発現量にはE. coli 株による差異が確認された。また,ウエスタンブロッティングにより,抗Hisタグ抗体との抗原抗体反応が確認されたため,得られたタンパク質はKARに由来すると考えられた。今後は,このリコンビナントタンパク質をウサギに免疫して抗体を得る。 2)KAR- A,-B ,-Cをそれぞれ組込んだ真核細胞発現プラスミドベクターをフグに筋肉注射後,DNAワクチンとしての効果を検証した。その結果,KAR-Aプラスミド区において,攻撃試験における死亡率が有意に低く,かつ生残魚の口白症の症状が他の試験区と比べて軽微であったが,全ての試験区の生残魚の脳からKARが検出され、その発現量は各区間で有意差がなかった。これらの結果から,KAR-Aプラスミドを接種したトラフグでは,口白症の重篤化を予防する効果が誘導されたと推察された。今後は,接種原をKAR-Aプラスミドに絞り,そのワクチン効果を詳細に検証する。
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