研究課題/領域番号 |
22K05823
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
阿見彌 典子 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (20588503)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 夏眠 / イカナゴ / メラトニン |
研究実績の概要 |
<行動解析と斃死率>2023年度も給餌量に差をつけることで,高肥満度個体と低肥満度個体の飼育を行なった.2022年度の結果も考慮して,2群の肥満度の差をさらに広げるために低肥満度個体の肥満度をより低く設定した.高肥満度個体の遊泳率は5月末から徐々に減少して7月末に夏眠を開始した.一方,低肥満度個体の遊泳は高肥満度のほとんどの個体が夏眠を開始した時期に相当する7月中旬まで維持され,23℃で遊泳が大幅に減少した.しかし,点灯時および給餌時には一時的に遊泳が発現していた.2022年度の結果と合わせて考えると,肥満度2.5-3.2あたりの個体では,遊泳の減少および一時的な遊泳の消失は起こるが,非夏眠期時に強い反応を示す点灯および給餌への反応は消失しないことが示唆された.これらの反応が維持されることで,正常に夏眠が発現しないと考えられた.また,遊泳が一度消失した時期から斃死率が増加し,9月末までの時点で斃死率は70%以上まで上昇した.低水温で飼育し続けた低肥満度個体の斃死率は35%ほどだったことから,自然水温条件における低肥満度個体の斃死要因は低栄養ではなく高水温である可能性が示唆された.
<生理状態>2023年の実験により,夏眠を正常に発現できない個体は,夏眠期に生じるメラトニンの日周リズムの消失が起きないことが示唆された.また,高肥満度個体の脳内におけるレプチン遺伝子の変動を調べた.その結果,非夏眠期においては飽食給餌時にレプチン発現は有意に減少した.夏眠期にかけての変化を調べたところ,夏眠開始時に向けて脳レプチン遺伝子発現量は有意に増加し,夏眠開始後は徐々に減少した.以上の結果と行動解析の結果を合わせて考えると,低栄養個体は夏眠期にかけて食欲を抑制できないこと,さらに夏眠期に重要な行動のリズムの消失を行うことができない可能性が高い.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りイカナゴを入手できたことから,問題なく飼育実験が遂行できた.まだ測定が終了していないサンプルもあるが,低栄養個体では「行動リズムの変化」が正常に発現せず,結果的に高水温の影響を受けて斃死する可能性が見出されつつある.これは,当初の仮説通りであるため,研究は順調に進んでいると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究に関連するテーマとして並行して実施していた実験により,イカナゴの夏眠開始要因は水温ではなく,内因性の時計の影響を強く受けることが示唆された.それにより,イカナゴの夏眠生態の考え方はこれまでとは異なるものとなった.しかし,本研究において低栄養個体では行動リズムの変化が正常に生じず夏眠できない可能性が見出されていることから,本研究はより幅広い視点を持ってイカナゴの夏眠生態の理解に繋がる結果を出せると考えている.一方で,イカナゴ資源はさらに厳しい状態となっているため,2024年度入手できたイカナゴを用いて最大限の結果を得られるようにする.
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