研究課題/領域番号 |
22K05825
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
竹内 猛 沖縄科学技術大学院大学, マリンゲノミックスユニット, スタッフサイエンティスト (60599231)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | シングルセルRNA-seq / シングルセルATAC-seq / バイオミネラリゼーション / トランスクリプトーム / アコヤガイ / 真珠 |
研究実績の概要 |
アコヤガイによって作られる養殖真珠は日本でもっとも重要な水産資源の一つである。本研究では、真珠形成に関わる遺伝子発現調節機構を1細胞レベルで解明することを目指す。 本年度は、前年度に実施したアコヤガイ外套膜組織の細胞分離技術を洗練させ、シングルセルRNA-seqのシーケンスデータの量と質を向上させることに成功した。外套膜組織の摘出方法や細胞の処理に用いるバッファーなどの条件を検討し、再現性の高い外套膜のシングルセルRNA-seq実験技術を確立した。1細胞の精度で外套膜組織の詳細な遺伝子発現プロファイルが得られたことにより、貝殻形成に関わると考えられる新規の遺伝子を多数同定することに成功した。そのなかには、貝殻形成細胞に特異的に発現する転写因子も同定された。また、シングルセルATAC-seqのための細胞核分離手法の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アコヤガイ外套膜のシングルセルRNA-seq解析により、真珠や貝殻形成に関わると考えられる新規の遺伝子を多数同定することに成功した。また、貝殻形成細胞で特異的に発現する遺伝子は、過去の研究で同定された貝殻基質タンパク質の分布とも高い整合性を示している。このことは、外套膜シングルセルRNA-seqが正確に行われている裏付けにもなる。新規の貝殻形成遺伝子候補には転写因子も含まれており、貝殻形成機構の分子レベルでの解明に向けて大きな足掛かりが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
外套膜組織の細胞核分離技術を確立し、scATAC-seqを実施する。これまで行ったシングルセルトランスクリプトームデータと合わせて解析を行い、真珠・貝殻形成細胞で特異的に働く転写因子や、転写調節領域の特定を目指す。また、scRNA-seqで同定された、貝殻形成に関わると推定される新規遺伝子や転写因子について、RNAiによる遺伝子発現ノックダウン実験をおこない、貝殻表現型への影響を観察する。これにより、遺伝子の機能を推定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の細胞分離の条件検討に用いる実験試薬費用を抑えられたため。次年度予算と合わせ、実験消耗品費用の購入に充てる予定である。
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