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2022 年度 実施状況報告書

海洋生物由来の成人T細胞白血病治療薬リード化合物創製

研究課題

研究課題/領域番号 22K05836
研究機関鹿児島大学

研究代表者

濱田 季之  鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (40321799)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード成人T細胞白血病 / 海洋生物 / ジャノメアメフラシ / 海綿 / 新規化合物
研究実績の概要

成人T細胞白血病(ATL)の治療のために、これまでとは異なる作用メカニズムを持つ新規抗がん剤の開発が求められている。本研究は、申請者らの発見した薬剤耐性克服活性をもつ新規抗がん剤ヒプトシドの探索過程で用いた手法を用いて、主に鹿児島以南の海洋生物の中からATLに対する新規リード化合物を開発することを目的とする。
今年度は、沖縄産ジャノメアメフラシおよび鹿児島県竹島産Agelas属海綿からのリード化合物の探索を行った。ジャノメアメフラシのメタノール抽出物を二層分配法や各種クロマトグラフィー法を駆使し、分離・精製を行い、31種の化合物を単離した。そのうち21種については、主に核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて化学構造を決定した。結果として、6種の新規化合物を含む21種の化合物を得ることができた。同様の方法を用いて、Agelas属海綿から5種の既知化合物を単離・構造決定した。上記26種の化合物について、ATL患者由来のがん細胞株S1T細胞に対する細胞傷害活性を調べたところ、4種にやや強い活性、12種に中程度の活性が見られた。今後、更なる海洋生物由来の生物活性物質を探索するとともに、生物学的試験の準備を行なっていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、ジャノメアメフラシと海綿から26種の化合物を単離・構造決定し、そのうち6種が新規化合物であった。また、31種のうち、4種の化合物がS1T細胞(ATL患者由来のがん細胞株)に対して、やや強い細胞傷害活性を示し、12種が中程度の活性を示した。これらの結果は、本研究の目的である「海綿生物由来の抗ATLリード化合物の開発」に向けて、とても有意義な結果である。本研究の一部については、国際学術雑誌Tetrahedronに採択され、掲載された。また、第66回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会などで口頭発表した。

今後の研究の推進方策

今回単離されたジャノメアメフラシ由来の化合物のうち、構造未決定の10種の化合物の平面構造と立体化学について検討する。また、同生物から更に10種程度の化合物を単離・構造決定する。単離した化合物の絶対配置も決定する。
次に、今回S1T細胞に対して強い細胞傷害活性が見られた化合物は、その作用機序、抗腫瘍効果、毒性プロファイルを解明するための追加研究が必要であるので、活性化 T 細胞 (正常細胞)との毒性の比較、S1T細胞以外のATL細胞や多剤耐性株への傷害活性試験を行うことで抗腫瘍特性の解明をしていきたい。また、ウェスタンブロット法やRT-PCR法を用いたcaspaseやPARPなどのアポトーシス関連たんぱく質および遺伝子の発現試験やDNAヒストグラムを用いた細胞周期試験により、アポトーシス誘導メカニズムの解明も検討していく。

次年度使用額が生じた理由

当該年度に実施すべき出張(生物試料採集)の一部が急遽できなくなったことで、予算に余りが出てしまった。余剰分については次年度の旅費(生物試料採集または学会参加)として使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] New halogenated C15 acetogenins from Okinawan sea hare Aplysia dactylomela2022

    • 著者名/発表者名
      Koushi Matsuyama, Tomoe Inoue, Tomoki Muroga, Naomichi Arima, Matsumi Doe, Fumito Tani, Yuka Ookawa, Yuuka Okamoto, Satoaki Onitsuka, Hiroaki Okamura, Tetsuo Iwagawa, Toshiyuki Hamada
    • 雑誌名

      Tetrahedron

      巻: 120 ページ: 132889

    • DOI

      10.1016/j.tet.2022.132889

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ジャノメアメフラシ由来の新規C15アセトゲニン類やセスキテルペン類の構造と生物活性2022

    • 著者名/発表者名
      濵田季之、松山紘士
    • 学会等名
      第34回海洋生物活性談話会
  • [学会発表] 沖縄産ジャノメアメフラシ(Aplysia dactylomela)由来の新規ハロゲン化C15アセトゲニン2022

    • 著者名/発表者名
      松山紘士、井上智恵、室賀智毅、有馬直道、土江 松美、谷文都、鬼束聡明、岡村浩昭、濵田季之
    • 学会等名
      第66回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会

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公開日: 2023-12-25  

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