研究課題/領域番号 |
22K05842
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
耕野 拓一 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (20281876)
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研究分担者 |
桟敷 孝浩 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 主幹研究員 (10453250)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | エビ養殖 / スリランカ / 抗生物質 / 薬剤耐性 / BMP |
研究実績の概要 |
スリランカ国の農務省家畜衛生局、獣医研究所、ペラデニア大学、国立海洋研究機構でエビ養殖における抗生物質利用の状況について聞き取り調査を行った。スリランカでは稚エビ生産の段階では一部の抗生物質の利用が認められているが、その後のエビ養殖の生産段階では抗生物質の利用は認められていないことが明らかとなった。特に、スリランカではエビ養殖においてBMP(Better Management Practice)と呼ばれる衛生管理手法の導入を進め、エビの輸出(特にヨーロッパと日本)による外貨獲得を目指している。このBMPのもとでもは抗生物質の利用は認められていないことも明らかとなった 2022年8月にスリランカで最もエビ養殖が盛んであるプッタラム地区でエビ養殖業者からの聞き取り調査を行った。養殖業者ではBMPの導入が進んでいるものの、その十分な理解・定着が進んではおらず、BMPの理解が進むと、エビ収穫時の廃棄割合が少なくなる可能性が明らかになった。 エビ養殖業者への飼料などの生産資材を提供する、プッタラム地区の飼料会社での聞き取り調査も実施した。飼料工場のホワイトボードには利用が禁止されているはずの抗生物質(オキシテトラサイクリン)の文字が書かれており、エビ養殖業者における抗生物質利用の可能性が示唆された。 以上の研究から、利用されている可能性の高い3種類の抗生物質に焦点を絞り、プッタラム地区で次年度に疫学調査を進めることで、上記関係機関の了解を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国立海洋研究機構(NARA)研究員のNirukshika氏が帯広畜産大学博士後期課程に入学(2022年10月)したことで、スリランカの現地研究機関・大学などとの調整が順調に進むようになった。これにより、スリランカのエビ養殖における課題把握ができた。 特に疫学調査については、エビのサンプリングについてはペラデニア大学、抗生物質の残留についてはNARAで行うことで調整することができた。次年度の疫学調査の実施に目途がついたことが、大きな理由である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度にはプッタラム地区でエビのサンプリング調査をペラデニア大学と協力して進め、NARAの研究施設により、抗生物質残留の分析を進める予定である。サンプリングは約80戸の養殖農家で行い、対象とする抗生物質はChloramphenicol, Ciprofloxacin, Enrofloxacinの3種類の予定である。 分析の結果から、介入方法の検討を進める。エビの輸出促進を目的に、現地ではBMPの普及理解定着がスリランカ政府により進められている。BMPの理解が不十分であば、エビの疾病発生による生産減少や、周辺養殖農家への影響等(外部不経済)が生じる。こうした損失回避や社会規範に関連する介入(情報提供)方法が考えられる。 エビ養殖農家(約80戸)への介入は半数の40戸でのみ実施(Trial group)、残り半数の農家への情報提供(介入)は行わない(Control group)。2024年度に再度、疫学調査を実施し、エビのサンプリング調査を行い、抗生物質の残留検査などを行う。 2023年度と2024年度の疫学調査の結果比較(サンプル数は160戸の予定)を行い、BMPの理解定着の程度、および介入の効果について統計解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
疫学調査が次年度になったことが大きな要因である。 疫学調査に養殖エビのサンプリングと抗生物質残留に検査に関わる消耗品などで70万円程度が必要になる予定である。養殖エビのサンプリングは2023年の6~7月には実施予定である。 次年度使用額はこうした疫学調査に使用する計画である。
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