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2023 年度 実施状況報告書

気象現象の激甚化に伴う土壌保全および流域物質動態の統合的評価

研究課題

研究課題/領域番号 22K05883
研究機関宇都宮大学

研究代表者

大澤 和敏  宇都宮大学, 農学部, 教授 (30376941)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード土壌環境保全 / 土壌侵食 / 気候変動 / 豪雨 / 水・物質動態解析モデル
研究実績の概要

本研究課題では,農林地や流域における土壌保全及び流域水・物質動態解析の主要な解析モデルであるWEPP等を対象として,気象や土壌情報を統合的に整備し,豪雨の頻度や規模の増大を含む気候変動に対する土壌侵食の応答を的確に予測することを目的として,情報解析,室内実験,現地試験,そして数値シミュレーションを通して研究を遂行する。具体的には,(a)過去から将来の気象入力要素の全国的整備および統計処理,(b)国内主要土壌を用いた土壌の受食性の系統的評価,(c)土壌物性値を用いた受食係数の推定法の開発,(d)将来的な気候変動を考慮した水・物質動態の地域毎の比較・評価,という4つの具体的な目標を掲げ研究を遂行する。
2年目の2023年度では,目標(a)を継続実施した。農研機構より提供されているSI-CAT日本全国1km地域気候予測シナリオデータセットを用いて,気候変動を考慮した気象データベースをAMeDAS観測点1287地点で作成することができた。
それとともに,目標(b)を継続実施した。現有の降雨シミュレータを揺動式に改造し,降雨強度100 mm/h以上の豪雨を的確に再現できるようにした。また,沖縄県石垣市轟川における土砂流出の現地観測や沖縄県石垣市の試験圃場における野外試験を実施した。
目標(c)について,日本土壌に適用可能な新たな受食係数(リル受食係数,限界掃流力)推定式の提案を進めた。その結果,塑性土壌では,リル受食係数は塑性指数または砂含有率を変数として高精度に定式化され,限界掃流力は粘土含有率との間に概ね正の相関があった.一方,非塑性土壌では,リル受食係数と砂含有率に正の直線関係があり,限界掃流力は概ね一定値であった.
目標(d)について,土壌,地形,土地利用,営農方法の情報をGISにまとめ,WEPPによる広域解析を行う準備を進め,沖縄県石垣市轟川流域における解析を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までの進捗状況としては,概ね計画通りに順調に進展している。目標(a)の過去から将来の気象入力要素の全国的整備および統計処理については,日本国内の約1300地点における過去及び将来の気象要素のデータベースを構築することができ,計画通りの成果が上がっている。また,目標(b)の国内主要土壌を用いた土壌の受食性の系統的評価については,降雨シミュレータを更に改造して最大約200 mm/hの豪雨を的確に再現できるようになったこと,河川における土砂流出量の現地観測や実圃場における野外試験を進めることができており,計画に沿った形で進展できている。更に,新たな実施項目の目標(c)を進めた結果,リル侵食におけるリル受食係数及び限界掃流力の定式化に成功した。加えて,新たな実施項目の目標(d)についても,沖縄県石垣市轟川流域における土壌侵食・土砂流出解析の広域解析を実施することができ,計画通りに進んでいる。

今後の研究の推進方策

本研究課題の今後の研究の推進方策として,以下の事項について進める。
目標(b):降雨シミュレータを用いた侵食試験を継続実施する。また,沖縄県石垣市轟川における土砂流出の現地観測及び沖縄県石垣市の試験圃場における野外試験を継続実施する。
目標(c):(b)で得られた各受食係数と粒度組成や有機物含有率の土壌物性値を用いた推定式から算出される推定値を比較し,推定式を日本の土壌へ適用できる形へ改良する。昨年度までに流水による土壌侵食の程度を表すリル受食係数及び限界掃流力の定式化は完了しているので,降雨による土壌侵食の程度を表すインターリル受食係数の定式化を目指す。
目標(d):(a)によって気象入力データ,(b)及び(c)によって土壌入力データが整備される。それとともに,地形,土地利用,営農方法の情報をGISにまとめ,WEPPによる広域解析を行い,全国の侵食リスク評価マップを作成する。

次年度使用額が生じた理由

沖縄県石垣市における現地調査のための旅費が,当初の計画より少額だったため残金が生じた。その理由として,沖縄県石垣市在住の協力者に観測機器の保守を代行してもらったため,渡航にかかる旅費が発生しなかったためである。残金の使用計画として,現地で使用している気象観測機器(温湿度計)が故障したため,その購入費用に充てる。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (11件)

  • [雑誌論文] Alternative net longwave radiation equation for the FAO Penman-Monteith evapotranspiration equation and the Penman evaporation equation2023

    • 著者名/発表者名
      Matsui Hiroyuki、Osawa Kazutoshi
    • 雑誌名

      Theoretical and Applied Climatology

      巻: 153 ページ: 1355~1360

    • DOI

      10.1007/s00704-023-04524-y

    • 査読あり
  • [学会発表] 石垣島轟川流域における土地利用や営農形態の変化に伴う土砂動態の変化2023

    • 著者名/発表者名
      大澤和敏, 中谷祐哉, 松井宏之, 安西俊彦, 菊地哲郎
    • 学会等名
      2023年度(第72回)農業農村工学会大会講演会
  • [学会発表] 沖縄県における沈砂池堆積土の定量および農地還元による土砂流出抑制の評価2023

    • 著者名/発表者名
      菅原颯真, 大澤和敏
    • 学会等名
      2023年度(第72回)農業農村工学会大会講演会
  • [学会発表] 侵食解析モデルWEPP の適用性向上を目的とした粒度試験法の検討2023

    • 著者名/発表者名
      近藤航樹, 大澤和敏
    • 学会等名
      2023年度(第72回)農業農村工学会大会講演会
  • [学会発表] 受食係数推定式の改良を目的とした液塑性限界指標パラメータの有用性の検討2023

    • 著者名/発表者名
      川名未紗, 大澤和敏
    • 学会等名
      2023年度(第72回)農業農村工学会大会講演会
  • [学会発表] 簡易落水工による雨水貯留機能の空間的確率評価2023

    • 著者名/発表者名
      野中里紗, 松井宏之, 大澤和敏
    • 学会等名
      2023年度(第72回)農業農村工学会大会講演会
  • [学会発表] 水土保全を題材とした授業展開の検討及び分析2023

    • 著者名/発表者名
      溜池菜々子, 福田真由, 大澤和敏
    • 学会等名
      2023年度(第72回)農業農村工学会大会講演会
  • [学会発表] 泥炭火災後の熱帯泥炭地における二酸化炭素放出速度の評価2023

    • 著者名/発表者名
      福田真由, 大澤和敏, 吉野邦彦, ユディ セティアワン
    • 学会等名
      2023年度(第72回)農業農村工学会大会講演会
  • [学会発表] せん断強度の異なる土壌の流水および降雨に対する受食性2023

    • 著者名/発表者名
      山口敦史, 大澤和敏
    • 学会等名
      2023年度土壌物理学会大会
  • [学会発表] 栃木県那須野原地域における農業用水の現況調査及び不足要因の考察2023

    • 著者名/発表者名
      齋藤涼裕, 溜池菜々子, 大澤和敏, 會澤俊彦, 温水福実, 長馬禎, 柿沼愛海
    • 学会等名
      第74回農業農村工学会関東支部大会講演会
  • [学会発表] 施肥体系の違いが黒ボク土水田における炭素収支に及ぼす影響2023

    • 著者名/発表者名
      磯孔海, 早川智恵, 中村真輝, 金子海咲, 平井英明, 高橋行継, 山根健治, 大澤和敏, 藤井一至, 小﨑隆
    • 学会等名
      日本土壌肥料学会関東支部大会(東京大会)
  • [学会発表] 降雨エネルギーを指標とした土壌の受食性と強雨の侵食性の評価2023

    • 著者名/発表者名
      近藤航樹, 大澤和敏
    • 学会等名
      令和5年度農業農村工学会農地保全研究部会研究集会

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公開日: 2024-12-25  

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