研究課題/領域番号 |
22K05886
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
吉岡 有美 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (40753885)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 酸素・水素安定同位体比 / 環境トレーサー / 水蒸気 / 水循環 / 地下水涵養 / 同位体収支 / 水収支 |
研究実績の概要 |
酸素・水素安定同位体比は,水田のように強い蒸発を受けると,動的同位体分別効果によって同位体比が上昇するとともに蒸発線とよばれる酸素同位体比と水素同位体比の関係(傾き)が小さくなる特徴がある.蒸発の影響が大きく,水収支変動が大きい水田を対象として,日単位での水田の流入流出による水収支式,同位体収支式,大気水蒸気と水田水面付近の水蒸気との非平衡反応(動的同位体分別)で生じる蒸発水蒸気の同位体比をCraig-Gordon式を用いて推定し,田面水の同位体比変動をモデルを作成した.複数地域・複数年での現地観測データを用いてモデルのパメーターの同定および感度解析を行った.この際,湖沼における先行研究を参考にし,水田と湖沼における同位体モデリングの差異を抽出した. Craig-Gordon式のモデルパラメータのうち液相(水)より気相(水蒸気)の観測値を得ることは通常困難である.そこで,大気水蒸気の同位体比について感度解析を行った結果,水面上0.3mの観測値では田面水の同位体比を過大推定した.つぎに,降水加重平均値から同位体平衡を仮定して大気水蒸気の同位体比を推定したところ,再現性が向上した.Craig-Gordon式の大気静止状態を表すパラメータについては,通常の湖沼のモデリングで用いられる値n=1/2(粗い水面)では,蒸発線の傾きを過大推定した.n=2/3(滑らか水面)とすれば蒸発線の傾きの再現性が向上した.その他パラメータ,減水深,平衡同位体分別係数、相対湿度などが田面水の同位体比変動に与える影響が小さいことがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に水田の大気-地表部を対象とした水の同位体モデル作成を進めることができた.成果発表として,国際学会,国外学会招待講演,論文発表も行っておりおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
水田の大気-地表部のモデリングに続いて,地表から地下水面までの水田土壌内での同位体モデルの作成を行う.土壌内での水蒸気同位体の移動に伴う同位体比変動に着目するため,実験室での土壌カラム実験に取り組む予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に導入した水安定同位体比分析装置について,想定外の円安による価格上昇があった.そのため,購入予定であった一部物品の購入を断念した. 島根大学で同位体分析が可能となり,京都市の総合地球環境学研究所での同位体分析のための経費(旅費,その他として計上)が不要となった.
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