研究課題/領域番号 |
22K05887
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
上野 和広 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (60560167)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ダム / ため池 / 内部損傷 / 弾性波速度 / ベンダーエレメント |
研究実績の概要 |
2023年度は,まず前年度から積み残しとなっていた課題である,土質材料に発生する亀裂やせん断変形が強度・変形特性と遮水性へ及ぼす影響の解明に関する検討を行った.繰返し三軸載荷によって変形を生じさせた供試体を対象として非排水繰返し強度の評価を行った結果,供試体へ与える変形の大小によって,その後に保持する非排水繰返し強度へ異なる影響を及ぼすことが確認され,変形が小さい(大きい)場合に増加(低下)する傾向があった.遮水性への影響に関しては,予め亀裂などを導入した供試体の透水性を評価可能な三軸透水試験機を用いた検討を進め,土粒子の骨格構造や亀裂の存在が遮水性へ及ぼす影響についてデータの蓄積を行っている.基礎的な検討として,土質材料の骨格構造の相違に着目した試験を実施したところ,締固め度が比較的低い条件下において,凝集型の骨格構造を有する供試体の透水係数が大きくなることが確認された. また,当初の研究計画と目的である土質材料の損傷と弾性波速度の相関関係については,ベンダーエレメントを備えた三軸試験機を用い,予備載荷によって土質材料へ所定の損傷を与えた後,強度・変形特性や弾性波速度を評価する試験を実施した.その結果,損傷(軸ひずみ)の増加に伴って土質材料の強度・変形特性が低下することや,弾性波速度が非排水繰返し強度との間に一定の相関性を有することが確認された.今後,継続してデータの蓄積を行うとともに,上記の相関関係の分析を進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で目的とする内部損傷診断手法を構築するには,土質材料の損傷と弾性波速度の相関関係を明確にする必要がある.このための分析には,多くの試験データを要するが,現時点では分析に十分なデータの取得に至っていない.しかしながら,次年度も継続したデータの取得と分析を進めることにより,研究期間内には当初の目的を達成できると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,これまで実施してきた土質材料の損傷と弾性波速度の関係に関する実験を継続して実施し,多様な損傷の状態を想定したデータを蓄積する.また,取得したデータを詳細に分析することで,土質材料の損傷,強度・変形特性と遮水性,弾性波速度の相関関係を明確する.その上で,これら実験データや分析結果に基づき,堤体の内部損傷診断手法の構築について検討を行う.また,初年度に整備した土層を用いた模型実験に着手し,構築した手法の妥当性について検証を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)物品の見積額と実際の金額に差額が生じたため. (使用計画)今年度の残額分は,次年度に消耗品の購入に使用する.
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