研究課題/領域番号 |
22K05888
|
研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
近藤 文義 佐賀大学, 全学教育機構, 教授 (60253811)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 地盤改良 / クリーク底泥 / 一軸圧縮強さ / 石灰 / セメント / 配合条件 / 養生条件 |
研究実績の概要 |
北部九州の筑後川下流地域でのクリーク改修工事の際、改良材の最適配合量については、原地盤においてセメント系改良材50kg/m3が基本とされている。しかし、土の物理・化学的性質が地域性に由来する多種多様なものであるため、適正な改良材の配合量や複数の改良材を併用する改良についてはほとんど検討されていない状況にある。当該年度においては、石灰とセメントを併用したクリーク底泥の段階的な地盤改良に関して実験的に検討を行った。 本実験では、先ず供試体の養生期間中の型枠密閉状態での含水比の変化について検討した。初期含水比が116%の場合は改良材による含水比の違いはほとんど認められないが、初期含水比が133%の場合は材齢7日以降であればセメント改良土の含水比が最も低い結果を示した。このため、初期含水比が液性限界を超えるような高含水比の地盤であれば、セメントの水和反応による含水比低下の効果が石灰による吸水反応を上回るものと判断される。次に、最も高い一軸圧縮強さを示したのは、初期含水比が116%の場合で石灰→セメントの2段階配合のケースであるが、初期含水比が133%の場合ではセメント単独のケースであった。この結果、本研究で提案した石灰→セメントによる2段階配合は、液性限界以下の底泥であれば効果を発揮するものと推定される。また、本実験結果は著者らが既報(農業農村工学会論文集313,2021年)で報告した結果(材齢2~3日にて脱枠)とはほぼ同程度の一軸圧縮強さの結果を示しており、湿潤養生の条件下では一軸圧縮強さに及ぼす脱枠時期の影響は特に認められなかった。なお、当地区で実施されている地盤改良はクリーク内底泥への改良材の粉体散布による浅層混合処理工法であるため、この地盤改良法を室内実験で再現するためには供試体の養生方法に関する検討が今後必要であるため、引き続き検討していきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に記した通り、初期含水比の違いにより、石灰改良土とセメント改良土の含水比の変化について、初期含水比が液性限界を超えるような高含水比の地盤であれば、セメントの水和反応による含水比低下の効果が石灰による吸水反応を上回ることを明らかにした。次に、本研究で提案した石灰→セメントによる2段階配合は、液性限界以下の底泥であれば効果を発揮する可能性を示した点において進捗状況は良好である。本研究では湿潤養生の条件下では一軸圧縮強さに及ぼす脱枠時期の影響は認められなかったが、現地での地盤改良法を室内実験で再現するための供試体の養生方法に関する検討が不可欠であることを確認している。また、これまでは改良土の一軸圧縮強さを中心に検討を行っているが、耐久性を考察するためのスレーキング試験に関するデータが十分には得られていないため、引き続き検討していきたいと考えている。なお、ここに記した成果の一部は、令和4年度農業農村工学会大会講演会にて発表済みである。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、前年度の結果を踏まえ、石灰とセメントを併用した改良土の2段階配合試験を重点的に行う。この場合、ただ単に両固化材を同時にクリーク底泥に配合するのではなく、両固化材の固化メカニズムを考慮し、可能な限り両固化材の配合量の削減が可能となるような配合方法の確立を目指す。また、既往の関連研究においてはスレーキングの程度と強度特性に着目した研究例はないため、斜面の安定に必要なせん断強度の面だけでなく、スレーキング抵抗性を有する地盤に改良するためのセメントと石灰の最適配合量を実験的に明らかにすることを目標とする。すなわち、第1段階配合材料として石灰を使用し、石灰の脱水固化メカニズムにより底泥の含水比を低下させた後、第2段階配合材料としてセメントを後追い添加して水和化合物生成反応を利用した効率的な土質改良を試みる。力学試験やスレーキング試験に関してはこれまでに準じた実験内容とするが、供試体の養生方法として気中養生を行い、これまでに行ってきた湿潤養生での強度発現との違いについて明らかにする。以上により、これまで試行錯誤的に建設現場で行われてきた石灰またはセメント単独での地盤改良の施工方法に学術的知見を取り入れることが可能となる。研究成果については、農業農村工学会など関連の学会にて発表した上で、学術雑誌に論文として投稿する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は一軸圧縮試験機の保守点検費が特に必要なかったこと、および出張旅費や消耗品費の大部分を他の経費で賄うことが可能であった。したがって、未使用額は次年度以降に必要となる同試験機の保守点検費等の経費に充てることとしたい。
|