研究課題/領域番号 |
22K05894
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
土原 健雄 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 室長 (30399365)
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研究分担者 |
吉本 周平 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 上級研究員 (10435935)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 地下水 / 時系列解析 / 渇水 / 水田 / 環境トレーサー |
研究実績の概要 |
農業用地下水利用量が多く(全国二位)、長期間の地下水位観測データが入手可能な那須野ヶ原扇状地(栃木県)をモデル調査地とし、扇状地内の6地点の井戸で観測された約20年間の地下水位データの整理を行い、地下水位の予測のための線形回帰モデルの構築、時系列解析モデルの試行を行った。また、採取した地下水の電気伝導度や水温・水質の測定を引き続き行った。 複数の環境トレーサーを用いて扇状地の涵養源の分類を行い、異なる涵養源が地下水に及ぼす影響を明らかにする上でこれらの環境トレーサーが有効であることを明らかにした。水田の用水量が最大となる灌漑期初期に相当する4月の地下水位を予測するため、3~5ヶ月前の先行降雨の積算降水量を説明変数とした線形回帰モデルを構築した。時系列変動の解析手法であるSeasonal Mann-Kendall検定を用いて地下水位データを解析し、長期のトレンドが検出された地下水位データについてはそのトレンドを除去してから線形回帰モデルを構築することで、4月の地下水位の予測精度が向上することを明らかにした。また、地下水位を予測可能な時系列解析モデルについて文献レビューを行い、水文分野において適用実績のあるモデルとして指数平滑化法(Holt-Winters法)、誤差項付指数平滑化法(ETS),prophetモデル、季節自己回帰和分移動平均モデル(SARIMA)、Long Short-Term Memoryネットワーク(LSTM)を抽出し、一部の時系列解析モデルを地下水位データに適用しその精度を検証した。先行降雨と灌漑期初期の地下水位の関係性、先行降雨を変数とした線形モデルとSARIMAモデルの比較結果をとりまとめ国際誌に投稿し掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル調査地において入手した長期間の地下水位データの整理を進めるとともに、現地において環境トレーサー分析用の地下水を採取した。先行降雨の積算降水量を用いた線形回帰モデルを構築するとともに、複数の時系列解析モデルを抽出し、一部試行を行い、最も渇水リスクが高まると考えられる灌漑期初期の地下水位の予測精度の検証を行った。以上より、研究はおおむね計画通りに順調に進捗しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
モデル調査地の長期間の地下水位データを対象に、線形回帰モデルの他に、時系列解析、機械学習によるモデル構築を行い、灌漑期初期の地下水位の推定精度の検証、モデル間の比較を行う。実際に渇水回避策を講じることができるよう1~3ヶ月後の地下水位を推定可能なモデルを構築する。推定精度が十分でない場合、アンサンブル学習によって精度向上を図る方法を検討する。環境トレーサーの分析結果から得られた地下水涵養源の情報を用いて地下水位の予測精度が地点によって異なる理由を検討する。これにより、降水量以外の要因(河川水位、深層地下水位、水田涵養量等)を説明変数に加えるなどの判断支援を行うための環境トレーサーの援用方法を示す。これらの研究は関連学会等で最新の研究動向の情報収集を行いつつ効率的に進行させるとともに,得られた成果については順次発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、分析に供する多くの試料が想定していたより清浄で再分析が不要であったため、分析消耗品を効率的に使用できたことにより発生した残額である。次年度の調査においては当初予定より試料数を増やし、それらの試料の分析消耗品として使用する。
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