研究課題/領域番号 |
22K05895
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
三木 昂史 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 研究員 (70759688)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ソーラーポンド / 水熱源ヒートポンプ / 再生可能エネルギー熱 |
研究実績の概要 |
本研究では、農村における独立した熱源施設の開発を目的として、水熱源ヒートポンプによる熱利用時のソーラーポンド内の熱環境や、熱利用と蓄熱によるソーラーポンド内の環境制御を実験により解明する。実験室内に設置した高さ1.0m、奥行0.8m、幅4.2mの水槽に、蓄熱部分として底部から水深0.3mまで塩分濃度4%となるように、水深0.3mから水面まで濃度0%の塩分勾配が生じるように調整した水深0.7mのソーラーポンドを製作した。ポンド底部には、幅0.3m、長さ3.8mのシート状熱交換器を設置し、塩ビ管で出力2kW相当のヒートポンプと繋げてヒートポンプシステムを構築し、蓄熱及び熱利用実験を実施した。 実験室内におけるソーラーポンドの蓄熱実験では、日射による蓄熱の影響を無視してヒートポンプを用いて蓄熱した。ヒートポンプを12時間冷房運転させると、室温18℃に対してポンドの蓄熱部分は水温31℃となり、約55 MJの熱量が蓄熱できることが明らかとなった。ポンド底部に断熱材を使用していない条件では、蓄熱部分の水温は24時間で室温と同程度になるため、熱源施設としてソーラーポンドを運用するためには蓄熱材が必要である。 熱利用実験では、ソーラーポンドを熱源としてヒートポンプを6時間、暖房運転させることで評価した。熱利用実験中、ポンドの水深0.1から0.3mまでは室温より1から6℃ 高い水温を保っていた。しかし、水深0.05mの熱交換器付近の水温は2時間で室温と同程度となり、3時間経過すると、室温以下となった。したがって、ソーラーポンドに蓄熱した熱を有効かつ効率的に取り出すためには、蓄熱部分全体から採熱できるようにシート状熱交換器を底部に対して鉛直に設置した方が良い。また、熱源となるポンドの水温の低下とともに、熱交換量や熱交換器の熱通過率、システムCOPが低下することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
施設の工事や実験設備の故障の修繕などで時間を要したものの、本年度は実験室でソーラーポンド内の熱環境やソーラーポンドを熱源としたヒートポンプシステムの熱利用特性を評価する実験をおおむね計画通り実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
屋外フィールドにおいて、塩分濃度の異なる条件のソーラーポンドの蓄熱及び熱利用実験を実施し、ソーラーポンドの熱環境や蓄熱特性、ヒートポンプシステムの熱交換特性を評価する。屋外のソーラーポンドの試験では、日射による蓄熱とヒートポンプによる蓄熱、熱利用を繰り返すことで、施設の熱需要に応えることが可能な熱源施設の開発を目指す。ソーラーポンドとヒートポンプシステムの熱利用実験により、ソーラーポンド内の熱環境を評価するとともに、熱源管理方法や農業用ハウスへの熱利用方法等について検討する。また、ソーラーポンドを熱源とした際のヒートポンプシステムの熱交換効率についても評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の予算に合わせて使用する。
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