研究課題/領域番号 |
22K05897
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
渡部 博明 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, 上級研究員 (10370628)
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研究分担者 |
若林 勝史 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, グループ長補佐 (00502890)
高橋 英博 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, グループ長 (30414783)
ソン ブンリ 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, 研究員 (30837498)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 中山間水田作地帯 / 小地域 / 空間的地目・作目配置 / 最適化 / 線形計画法 / GIS |
研究実績の概要 |
本研究は、中山間水田地帯を対象に以下2課題に取り組むことを目的とする。第一に、空間的地目・作目配置の変更が及ぼす農地管理力(農地面積合計等)と収益力(労働力1人当たり農業所得等)への影響を、小地域単位で評価できる空間的地目・作目配置評価モデル(以下、評価モデル)を策定する。第二に、評価モデルの現地適用により、農地管理力と収益力の同時引き上げに有効な地目・作目の空間的配置とその実現に必要な技術的・制度的条件を実証的に提示する。 初年度となる2022年度の実績は以下の通りである。第一の課題については、評価モデルの基本設計とプロトタイプの作成を行った。具体的には、実証地である集落X内の水田計116区画を対象に線形(整数)計画法を適用し、どの区画で、どの作目を生産すれば集落全体の農業所得が最大化されるのかを把握するための単体表を試作した。単体表の作成には作目別・区画別の利益係数(収支状況)と労働係数(労働時間)等のデータが必要となる。基幹作目の水稲作の労働係数については、春秋の労働ピークとなる田植えと稲刈りの労働時間が、区画形状(面積、周辺長、長短辺比等)に応じて推計できる労働時間推計式を導出し、その推計式を全区画に適用して得た。労働時間推計式の導出に必要な基礎データは圃場での労働時間を実測して得た。区画形状はGISにより把握した。その他のデータは担い手経営に対するヒアリングや統計書等から取得した。 第二の課題については、試作した評価モデルを集落Xに適用し「集落外縁部にある限界的農地は、畑地化した上で粗飼料用コーン作を配置する等,労働粗放的な畜産的土地利用を展開すること、集落非外縁部の農地には水稲作や野菜作を集約的に配置することが、農地管理力と収益理力の同時引き上げに有効である」という結果を得た。以上の研究内容は2023年3月の日本農業経済学会等、2学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一の課題については、評価モデルの基本設計と線形計画法の単体表の作成という当初の計画を達成できた。一方、第二の課題については、評価モデルのプロトタイプを現地に適用して導出された空間的地目・作目配置の最適解を現地役場の担当者や担い手に提示し、結果の妥当性や実現の可能性と条件等について検討する予定であったが、役場の担当者の異動等により予定通りに実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2年度目となる2023年度は以下の作業を進める。第一の課題については、空間的地目・作目配置評価モデルの拡張に取り組む。すなわち、基幹作目(水稲作、野菜作、和牛繁殖等)と営農拠点(場所)が異なる複数の担い手を考慮したモデルおよび集落Xを含むより広域の複数集落を包含したモデルの構築である。第二の課題については、現地役場の担当者や担い手に分析結果を提示し、結果の妥当性や実現の可能性と条件等について考察する。 なお、今年度学会発表を行った研究内容は論文化し学術誌へ投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定より短期間で済んだ現地調査があること、現地検討会が予定より少ない回数であったこと、から旅費等の関連経費の執行額が予定を下回った。まず現地調査については、区画ごとの田植えの労働時間を計測する調査を実施したが、予定より短期間で必要なサンプル数(区画数)が得られた。また現地検討会については、評価モデルのプロトタイプモデルを用いて導出した空間的地目・作目配置の最適解を現地役場の担当者や担い手に提示し、意見交換を行う予定であったが、担当者の異動等により予定通りの実施できなった。後者については次年度(2023年度)実施することもあり、その経費が次年度使用額となった。
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