研究課題/領域番号 |
22K05901
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
折笠 貴寛 岩手大学, 農学部, 准教授 (30466007)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 乾燥 / ブランチング / 減圧マイクロ波 / X線CT / ライフサイクルアセスメント / 抗酸化活性 / 食品ロス / 環境負荷 |
研究実績の概要 |
減圧マイクロ波乾燥(VMW)ショウガのジンゲロール・ショウガオール含有量、DPPHラジカル消去活性および食味に与える影響について検討し、ショウガに対する減圧マイクロ波乾燥処理の適用可能性について考察した。その結果、VMWショウガはHAショウガと比べて辛味が抑制され、香りが増す可能性が示された。今後は、香りに着目したVMWの条件の検討と香気成分の同定を行うことで、VMW乾燥ショウガの特徴を生かした加工食品の製造が期待される。 シイタケのVMW乾燥をターゲットとして、乾燥速度と試料構造の関係について調査したところ、3 kPaと20 kPaの条件下では、特に低圧と高マイクロ波出力がシイタケの水分を変化させる主要因であることを明らかにした。X線CT画像の観察によると、3 kPaで乾燥させた試料はより小さな孔を持つ多孔質構造が多かったが、20 kPaで乾燥させた試料では細胞の塊の形成に伴い、より大きな孔を形成したと推察された。 日本から台湾に輸出される生鮮リンゴ、および日本国内で流通しているモモを対象にライフサイクルアセスメント(LCA)を実施し、サプライチェーン上のホットスポットを特定した。さらに、ポストハーベスト工程に着目し、ライフサイクル環境影響を最小化する方法を探った。その結果、緩衝包装導入に伴うロス削減、日本の国内輸送へのモーダルシフトの導入、船舶輸送において農地に近い港の利用など、環境負荷を削減する具体的方法を示した。 低環境負荷の観点からキャベツの遠赤外線乾燥における最適な乾燥トレイ材質を評価した。その結果,ポリプロピレン製トレイの代わりにスチール製トレイを用いることでCO2排出量が約30 %削減されることを示した。また,低環境負荷条件で乾燥キャベツを製造するには,トレイ輸送および試料乾燥工程におけるCO2排出量の削減が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、減圧マイクロ波乾燥における乾燥速度増加のメカニズムの解明に必要なX線CTによる構造解析を行うとともに、ショウガの官能評価結果に基づく減圧マイクロ波処理適用の可能性について、詳細に検討した。さらに、ライフサイクルアセスメントをいくつか農産物流通プロセスに適用し、食品ロス低減が環境負荷を減少させる要因となり得る可能性を示唆するとともに、シナリオ分析に基づき、農産加工プロセスにおいて環境負荷を削減する要因についても検討した。減圧マイクロ波処理の品質評価に関しては、X線CTによる画像解析に基づき、乾燥速度と試料構造の関係について明らかにするなど、一部で当初予定を超える成果が得られており、全体的には順調に進捗していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、2023年度に取りまとめに着手した重みづけを考慮した複数の評価項目に関する品質評価モデルの構築について検討を進める。さらに、減圧マイクロ波処理における環境負荷を評価し、品質と環境負荷の最適条件について明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に生じた残額(117万円)のうち、70万円程度は物品費および旅費として使用した。一方、研究計画の変更により、2023年度に学生に依頼する予定であった実験が次年度に実施することとなったため、計上していた費用(物品費および謝金)の一部が未消化となり、残額が発生した。2024年度は、これら延期した実験を実施することにより、残額の多くは当初計画通り執行できる予定である。
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