研究課題/領域番号 |
22K05906
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
橋本 篤 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (40242937)
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研究分担者 |
末原 憲一郎 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 教授 (70291614)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 殺菌効果 / 真空凍結乾燥 / 高周波誘電加熱 / 食品モデル |
研究実績の概要 |
本研究では,食品の高周波加熱併用真空乾燥過程における乾燥・殺菌同時操作の最適操作条件の探索を研究目的としている。研究1年目の2022年度は,高周波誘電加熱併用真空凍結乾燥特性に及ぼす高周波を発生させる電極サイズの影響,および乾燥試料成分の影響について検討し,乾燥特性に及ぼす電極サイズの影響を無視できること,また,食品モデルとして凍結寒天を用いその凍結寒天中に添加物を加え乾燥特性に及ぼす影響を検討したところ,添加物の種類などにより乾燥速度に差異が生じることがわかった。さらに,高周波誘電加熱を併用することにより真空凍結乾燥過程において殺菌が可能であることが確認された。 そこで,研究2年目の2023年度においては,試料に添加する添加物成分特性に着目した高周波誘電加熱併用真空凍結乾特性について検討し,その上で,高周波誘電加熱殺菌特性と乾燥過程における殺菌特性との関係に及ぼす添加物成分濃度の影響について実験的に把握することを試みた。その結果,添加物濃度と乾燥速度とに相関があること,また,乾燥速度が速いほど試料中に分散した供試細菌の死滅速度が速くなることがわかった。また,乾燥速度定数と供試細菌の死滅速度定数とに強い相関が認められた。つまり,乾燥試料の添加成分濃度により高周波誘電加熱併用による乾燥時間の短縮効果に差異が認められ,乾燥過程における殺菌効果も乾燥試料の特性に影響を受けることが実験的に示された。 以上のように,研究2年目の2023年度においては,研究目的を遂行するための実験的な基盤が得られたものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
凍結寒天および凍結寒天に食塩を添加した試料を調製し,高周波誘電加熱併用真空凍結乾特性に及ぼす食塩濃度の影響について検討した。食塩を添加することにより乾燥が促進され,また,食塩濃度が高いほど乾燥速度が速くなり,高周波誘電加熱併用の効果が顕著となった。一方,乾燥試料中に黄色ブドウ球菌を分散させ,高周波誘電加熱併用乾燥過程における供試細菌の死滅挙動について検討した。乾燥特性と同様に,食塩を添加することにより供試細菌の死滅が促進され,また食塩濃度が高いほど死滅速度が速くなり,高周波誘電加熱併用の効果が顕著となった。そこで,乾燥試料の含水率の経時変化と乾燥試料中の生菌数の経時変化に関する速度定数を求め,その関係性について検討した。その結果,乾燥速度定数と死滅速度定数との間に正の相関が認められ,乾燥時間の短縮と殺菌効果の促進に関係性があることが実験的に示された。 以上のように,研究2年目の2023年度においてほぼ予定通りの成果が得られ,3年目の研究基盤が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,食品の高周波誘電加熱併用真空凍結乾燥過程における乾燥・殺菌同時操作の最適条件の提示を目的としている。研究3年目の2024年度においては,2022年度と2023年度の研究成果を基礎として,乾燥特性および殺菌特性に及ぼす添加物成分や濃度の影響についてより詳細に検討することにより,乾燥特性と殺菌特性の関係について考察する。その上で,高周波誘電加熱式真空凍結乾燥過程における殺菌の実際の食品加工プロセスへの適用性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由: アフターコロナにおいてもオンライン化が進み,情報収集や研究打合せのための出張が少なくなったため,旅費の使用が予定よりも少額となった。また,温度測定用の光ファイバーが想定していたよりも長持ちしたため,消耗品費が予定よりも少額となった。 使用計画: これまで光ファイバーが長持ちしたため,2024年度はその消費が多くなるものと考えられる。また,研究成果発表等のため旅費の支出が増えるものと考えられる。このため、生じた未使用額はこれらに充当する予定である。
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