研究課題/領域番号 |
22K05909
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
森松 和也 愛媛大学, 農学研究科, 講師 (70746742)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 耐熱性芽胞 / 高圧発芽誘導 / 超休眠芽胞 |
研究実績の概要 |
本研究では高圧処理による超休眠芽胞を含む全芽胞の完全な休眠打破を目的としている.令和5年度では熱処理による超休眠芽胞の高圧発芽誘導効果の向上に関する研究を遂行すると共に,超休眠芽胞の高圧処理後の耐熱性低下について検証した. 枯草菌(Bacillus subtilis)が形成した芽胞を対象とし,リン酸緩衝生理食塩水に懸濁した上で用いた.昨年度までに,100 MPaの高圧発芽誘導は,70 ℃以下の熱による前処理で促進され,80 ℃以下の熱による前処理で抑制されることを明らかにした.これに対し,600 MPaの高圧発芽誘導はいずれの温度でも熱による前処理で促進された.本年度では,70 ℃・60分間または90 ℃・5分間の熱による前処理を施した芽胞へ100-600 MPaの高圧発芽誘導をそれぞれ行い,熱による前処理が高圧発芽誘導に及ぼす影響を圧力毎に検証した.その結果,70 ℃・60分間の熱による前処理では,いずれの圧力でも高圧発芽誘導が促進された.一方,90 ℃・5分間の熱による前処理による高圧発芽誘導に対する影響について,300 MPa以下の圧力では抑制され,400 MPaでは影響が示されず,500 MPa以上の圧力では促進された.圧力の大きさに応じて高圧発芽誘導のメカニズムが異なることが知られていることから,高圧発芽誘導のメカニズムの違いにより90 ℃・5分間の熱による前処理による高圧発芽誘導に対する影響が400 MPaを境に異なったと考えられた. 100 MPaの高圧処理を施した後の超休眠芽胞は耐熱性が低下することが知られる.このとき,高圧処理前後の超休眠芽胞に含有するジピコリン酸と金属イオン含量を調べると,ジピコリン酸は顕著に減少し,金属イオンもわずかに減少した.そのため,高圧発芽誘導に対する超休眠芽胞の感受性の低さはこれらの成分が少ないために生じていた可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度では,(1)熱による前処理で生じる高圧発芽誘導の促進/抑制の影響を圧力毎に検証した.さらに,(2)100 MPaの高圧処理後も未発芽状態の超休眠芽胞の内部成分について調べた.本来であれば,予定してた発芽レセプター欠損株を用いた実験については着手できていないが,高圧発芽誘導へ熱による前処理が与える促進/抑制作用に対して処理圧力で異なることや超休眠芽胞の内部成分の特異性を明らかにした.以上のように予定外の内容についても研究を行ったため,予定した実験を行っていないが,実験成果としては当初の予定と同等の成果が得られたと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度では,まず,発芽誘導物質による高圧発芽誘導への影響について検証する.さらに,発芽レセプター欠損株を用いた実験について着手し,超休眠芽胞の高圧発芽誘導に対して熱処理による促進/抑制作用を生じさせる発芽レセプターを特定する.また,熱による前処理で生じる促進/抑制作用が継続的に働くかを検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の使用状況が令和5年度において当初の予定より少なくなったため,予算残額が少額生じた. なお,研究計画の進捗自体への支障はない.
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