研究課題/領域番号 |
22K05912
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
西脇 亜也 宮崎大学, 農学部, 教授 (60228244)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 近赤外分光 / 水分 / 乾燥ストレス / 灌水 / センサ / 土壌マトリックポテンシャル / Android OS端末 / タブレット版 |
研究実績の概要 |
携帯型の近赤外分光センサを使った水分計の開発によって、農作物体内の水分を非破壊・非侵襲測定可能となり、農作物の水要求量を即時モニタリングした灌水制御が可能となると考えた。プロトタイプ水分計(パソコン版)を開発し、ポット栽培中のナスの干ばつ実験を実施した結果、土壌の乾燥による土壌マトリックポテンシャルの変化にともなう植物体内の水分量の減少を非破壊測定可能であることが明らかとなった。そこで、ナス以外の農作物でもこの方法が有効かどうかを明らかにするとともに、携帯性と即時応答性を改善した水分計(タブレット版)を開発することで、様々な農作物に適用可能な灌水制御方式の構築を目指している。 土壌の乾燥による土壌マトリックポテンシャルの変化にともなう植物体内の水分量の減少パターンのデータについては、以前はナスで得たが、2022年度には温室で栽培されて精密な灌水管理が望まれるトマト、ピーマン、キュウリなどの他の作物について、2023年度は果樹の柑橘苗についてもデータを得た。 また、この一連の研究では、破壊式測定による作物体内水分量と近赤外分光データとの回帰式を用いてノートパソコン上で解析していたが、ノートパソコンは携帯性が低く、生活防水機能等も無いため野外での使用には不向きである。こ。そこで2022年度に株式会社FOTとの共同研究によって、Android OS端末に近赤外分光センサーを接続した水分計を共同開発した。この水分計(タブレット版)はパソコン版よりも携帯性と即時応答性が大幅に改善されたため、実用化に大きく近づいた。 2023年度は、この水分計(タブレット版)を用いて、トマト苗について、土壌の乾燥による土壌マトリックポテンシャルの変化にともなう植物体内の水分量の減少を非破壊測定を行い、水分の増減のパターンが、土壌と葉、茎で異なることなど、植物体内の水分動態の実態把握が可能となった。 。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
携帯型の近赤外分光センサを使った水分計の開発によって、土壌の乾燥による土壌マトリックポテンシャルの変化にともなう植物体内(ナス)の水分量の減少を非破壊測定可能であることが明らかとなった。そこで、2022年度はナス以外の農作物でもこの方法が有効かどうかを検討した結果、有効であることが明らかとなった。さらに携帯性と即時応答性を改善した水分計(タブレット版)の共同開発に成功した。2023年度は、この水分計(タブレット版)を改良するとともに、この水分計を用いて、トマト苗について、土壌の乾燥による土壌マトリックポテンシャルの変化にともなう植物体内の水分量の減少を非破壊測定を行い、水分の増減のパターンが、土壌と葉、茎で異なることなど、植物体内の水分動態の実態把握が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、開発された水分計(タブレット版)のさらなる改良を試みる。具体的には、近赤外分光センサを植物の茎に密着させるアタッチメントを3Dプリンターで2023年度に制作したが、これを様々なサイズの植物に装着できるように改良する。また、水分計(タブレット版)のAndroid OS端末で動作するアプリケーションの改良により、データロガー機能とデータの無線送信機能を2023年度に付加したが、この機能の改善を試みる。 これらの工夫により、水分計(タブレット版)を植物体に常時接続して測定することが可能となり、植物自身を水分計として乾燥ストレスを直接測定しながら、乾燥ストレスを精密に制御する精密潅水システムを構築することが可能となることが期待される。 2023年度は、トマトを材料に実験を行ったが、2024年度は、乾燥ストレスを精密に制御することで高品質な果実生産が可能となる、柑橘苗を用いた実験を行う。
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