研究課題
擬似微小重力環境下で発芽、生育させた黄化エンドウ芽生えはオーキシンの極性移動の低下により傾斜成長する。オーキシンの蓄積部位を調べるために、オーキシン誘導性遺伝子であるDR5のプロモーターにレポーター遺伝子であるGUS遺伝子を接続した組換えエンドウを3-D クリノスタットを用いた擬似微小重力環境下において暗所で発芽、生育させたところ、1 G重力環境下と同様にオーキシン極性移動が行われているとされている導管周辺や表皮で GUS活性が認められたが、1 G重力環境下のものと比較して、GUS活性が低く、微小重力環境下では、オーキシン極性移動の低下のみならず、蓄積量も低下していることが示された。また、Ca2+チャネル阻害剤やCa2+キレート剤存在下で発芽、生育させた黄化エンドウ芽生えもオーキシン極性移動能が低下し、傾斜成長するため、Ca2+の動態とオーキシン極性移動やオーキシンの蓄積の関連について明らかにすることとした。Ca2+チャネル阻害剤GdCl3、Ca2+キレート剤EGTA存在下において、DR5-GUS組換えエンドウを暗所で発芽、生育させたところ、無処理区と同様に導管周辺や表皮で高いGUS活性が認められたが、オーキシン極性移動が低下した GdCl3、EGTA存在下では、芽生えの頂端部では高い GUS活性を示したものの、基部でのGUS活性は低かった。一方、Ca2+局在をCa2+インジケーターであるFluo-8 AMを用いて調べたところ、GdCl3、EGTA処理区では、GUS活性と同様に頂端部では導管およびその周辺で Ca2+の蓄積が認められたが、基部ではわずかな蓄積のみが認められた。これらの結果から、オーキシンと Ca2+の局在は一致していることが明らかとなり、Ca2+がオーキシンの極性移動や蓄積に関与している可能性が示唆された。
3: やや遅れている
PsPINの局在の経時変化を調べるために、PsPINに蛍光タンパク質を接続させた形質転換エンドウを作出する予定であるが、形質転換植物の作成に手間取っている。
PsPINに蛍光タンパク質を接続させた形質転換エンドウを作出は引き続き行う予定ではあるが、それと並行して、Ca2+チャネル阻害剤やCa2+キレート剤を処理したときのPsPINの局在を免疫染色でも観察する予定である。また、異なる重力環境下におけるCa2+の濃度や局在についても調べる予定である。さらに、異なる重力環境下で、細胞骨格であるアクチンや微小管を抗体を用いて検出し、重力による細胞骨格の変化を調べるとともに、アクチンや微小管の重合阻害剤を処理して生育させた黄化エンドウ芽生えにおけるCa2+動態やオーキシン極性移動を調べ、それらの関係性について解析する予定である。
コロナ禍で共同研究先への出張が多少制限されたため、次年度使用額が生じた。次年度は新型コロナウイルスによる影響はないと考えられるため、共同研究先への出張や学会発表に係る出張旅費として使用したいと考えている。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Life Sciences in Space Research
巻: 36 ページ: 138-146
10.1016/j.lssr.2022.10.005