研究課題/領域番号 |
22K05934
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
岡本 賢治 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (80283969)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ブナ科 / マテバシイ / ドングリ / 担子菌 / 多糖 / ウロン酸 / タンニン |
研究実績の概要 |
担子菌においてβ-グルカンなどを代表とする細胞壁多糖に関しては広く知られているが、菌体外へ生産する多糖の情報は少ない。本研究では植物果実によって担子菌が誘導される特異な糖転移反応を解明するとともに、その多糖の特性解析を目的とする。今年度は、植物果実に由来する多糖の合成に関わる物質の探索と、多糖の主な性質を調査した。ブナ科マテバシイ属の常緑広葉樹マテバシイの果実ドングリを粉砕した培地(窒素源無添加)に白色腐朽菌Peniophora sp.を接種して培養した結果、培養液が顕著な粘性を呈し、多糖の存在を認めた。一方、グルコース、ガラクトース、マルトース等を炭素源とした培地で同菌を生育させても多糖の生産はなかった。ドングリの主成分であるデンプンを用いた場合も同様であった。そこで、多糖誘導に起因する物質として、ドングリの特徴でもあるポリフェノールのタンニンに着目した。すなわち、ポリフェノールは抗菌作用以外にアミラーゼなどの糖質分解酵素を阻害する働きがあることから、代謝にも影響を与える可能性を考えた。しかしながら、タンニンを添加した試験において、タンニンと多糖生産との明確な因果関係は認められなかった。また、ドングリ培養ろ液からエタノール沈殿で回収した粗多糖の分子量は約6000を示した。さらに、酸加水分解処理により糖組成を分析したところ、フコース、ラムノース、アラビノース、ガラクトース、グルコース、キシロース、マンノースおよびウロン酸から構成されるヘテロ多糖であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
担子菌Peniophora sp.がブナ科の植物果実を原料とした場合に顕著な多糖を生産すること、既報の微生物多糖とは異なる構成糖を有していることが明らかとなった。当初の計画通りに進んでおり、また、ブナ科以外の果実においても多糖の生産を認めるなど、新たな知見も得ている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、回収した多糖を精製し、詳細な解析を行う。引き続き、多糖合成の原因となる物質の絞込みを進める。また、糖転移に関わる酵素について調査する。
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