研究実績の概要 |
ブナ科マテバシイ属の常緑広葉樹Lithocarpus edulisの果実ドングリを粉砕した培地に白色腐朽菌Peniophora sp.を生育させた結果、顕著な多糖を生産する現象に着目した。当該多糖はフコース、ラムノース、アラビノース、ガラクトース、グルコース、キシロース、マンノース、およびウロン酸から構成されるペクチン様多糖であった。原料のドングリに由来した糖をベースに多様な糖が複雑に結合した構造と推測する。カワタケ科のPeniophora sp.以外にも同条件で多糖を生産する菌株を調べたところ、シワウロコタケ科のPhlebia acerinaにおいても多糖の生産を認めた。Peniophora sp.が生産する多糖の分子量が約5,500であるのに対し、Phlebia acerinaは約6,300であった。多糖の構成糖は同様であったが、Peniophora sp.はグルコースが、Phlebia acerinaの方はウロン酸の含量が高い傾向を示した。また、ムクロジ科トチノキ属の落葉広葉樹Aesculus turbinataの果実として知られるトチの実を原料にした場合でも、両菌株は多糖を生産可能であった。 一方で、これら培養物における多糖以外の有用物質の探索を行ったところ、抗酸化活性のほか、トチの実を用いたPeniophora sp.の培養ろ液では腸管内でのコレステロール吸収に関わる酵素コレステロールエステラーゼに対して比較的強い阻害活性を検出した。多糖そのものは阻害活性を示さず、菌未接種の培地では認められなかったことから、多糖とは別に生産される低分子化合物に起因するのではないかと考え、分析を進めている。
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