研究課題/領域番号 |
22K05938
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研究機関 | 公立鳥取環境大学 |
研究代表者 |
角野 貴信 公立鳥取環境大学, 環境学部, 准教授 (50511234)
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研究分担者 |
小嵐 淳 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究主席 (30421697)
山本 敦史 公立鳥取環境大学, 環境学部, 准教授 (40332449)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 土壌侵食 |
研究実績の概要 |
2023年度は、前年度行えなかった周辺地質を考慮したモデルへの拡張を行うため、懸濁物質中の元素組成のデータを、採取地点付近の河川堆積物中に含まれる元素組成と比較した。前年度と同じ千代川流域内の11採取地点において、河川水等の試料を採取した。0.45μmのメンブレンフィルターで河川水をろ過することにより、河川水中の懸濁物質を分別した。一方、河川堆積物は、篩別法とピペット法により粒径ごとに分別した。粒径区分は、礫、粗砂、細砂、シルト、粘土とした。元素組成の測定は、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて行った。得られた測定値を階層型クラスター分析により類似性の検討を行った。 元素組成からみると、礫画分と粗砂画分は似た組成をしていることがわかった。同様に、2022年採取の懸濁物質は堆積物のシルト+粘土画分と、2023年採取の懸濁物質は粘土や細砂画分と近いことが分かった。細砂画分の組成は、粗砂画分とシルト+粘土画分の間に位置するのではなく、懸濁物質の近くに位置していた。つまり、細砂画分の元素組成は、粗砂画分とは大きく異なり、懸濁物に近いことが分かった。 2022年に採取した際の懸濁物は、堆積物の粘土画分と組成が近いことから、比較的流速の緩やかな河川水中で懸濁したものであると考えられた。一方、2023年に採取した際の懸濁物は、比較的速い流れの中で運搬された細砂画分に近いものが懸濁して流下していた可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、前年度行えなかった周辺地質を考慮したモデルへの拡張を行うため、懸濁物質中の元素組成のデータを、採取地点付近の河川堆積物中に含まれる元素組成と比較した。その結果、一般に上流域の地質状況を反映していると言われる河川堆積物の組成は、礫画分および粗砂画分に表れると考えられた。一方、シルト画分や粘土画分の元素組成と懸濁物質中の元素組成を比較することにより、河川流量との関係が示唆された。ただし、以上の金属元素含量の組成では、土壌生成作用の寄与は明らかではなく、また、有機物指標を用いた関係性の評価には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も、有機物質の定量や組成を明らかにし、同位体データベースを作る当初の目的を達成するため、採取頻度および採取する試料の量を大幅に増加させることにより、より多くの懸濁物質を得られるよう工夫する。また、本学に設置されたマイクロ波プラズマ原子発光分光分析装置およびICP-MSを用いることにより、河川水中の溶存物質および湿式分解した河川懸濁物質、堆積物中の元素組成を測定し、蛍光X線分析装置では得られなかったデータの補完を行う。また、より地質の影響が検証しやすい小流域に注目し、土壌有機物や地質、河川懸濁物の関係を明らかにする。早急にこれまでの研究実績を含めた地理空間モデルの開発を終え、国内外のジャーナルへの投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)昨年度と同様に、河川水中の懸濁物質含量の少なさにより、有機物組成やその同位体組成に十分な量の試料を採取することが困難であったため、懸濁物質中の金 属元素組成を評価することによる研究目的の達成へと、研究方法を修正したことが原因である。また、堆積物中の有機物含量の高さに期待をかけて河川中の堆積 物を採取したものの、これも十分な量とはいえなかった。 (使用計画)小流域の堆積物に注目することにより、河川から採取できる固相の総量を増加させる工夫を行う。また、これまでの知見からおおよその土壌有機物量を試算することにより、効率よく有機物組成や炭素同位体を測定できるよう工夫を行う。
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